そのような事情が
「それで、婚約者や夫の有無は?」
「結論を簡単に述べますと、今現在は、
婚約者はいらっしゃらないようです。」
「つまり、前は、婚約者がいたのか?」
「はい。4年前に婚約破棄されています。」
「何!? 婚約破棄!?」
まさか、彼女も、婚約破棄を?
いや、しかし、人生は、十人十色。
似ているようで、似ていないかもしれない。
「いったい、彼女に、何があったんだ?」
「ビバールは、ご存知ですよね?」
「もちろん知っているよ。
グルイグール伯爵領、領主の嫡男だ。
ビバールは、身分違いの村長の娘さんと婚姻を結んで、かなり話題になっていたからな。」
「そのビバールが、村長の娘さんと婚姻するために婚約破棄を言い渡したそうです。」
「何!?そうなのか!?」
ああ、そういえば、グルイグール伯爵領は、エルナール辺境伯領の、すぐ隣の領地だ。
確かに、4年前から、グルイグール伯爵閣下とエルナール辺境伯閣下は、犬猿の仲。
王都での領主会議で、バチバチと、ケンカしている雰囲気であった。
なるほど………
そのような事情が………
「幸いにして、婚約破棄は、ひっそり行なわれたものの為、若気の至りということで、すんなり婚約破棄したそうですよ?それ以降は、婚約者探しをしていないままのようですね。」
「伯爵家同士の婚約の破棄は、若気の至りという言葉で済ませて良いものではないのだが」
田舎とはいえ、伯爵位相当の次期領主夫妻が、まさか、そのような形の結婚だったとは…
ビバールは、次期伯爵閣下で次期領主なのに、善悪の区別がつかないとは…
グルイグール伯爵閣下も、なかなかの野心家なお方ではあるが…
さすがに、伯爵位は辺境伯閣下や侯爵閣下には敵わないと知っているから大人しい方だぞ?
「グルイグール伯爵閣下は、野心家な方ですから大変お怒りだったようですよ。」
「ああ、なるほど………
せっかく、エルナール辺境伯家と親戚になれる予定だったのに?」
「ええ、そのような感じだったようですよ。
今は、そのビバールと村長の娘の間に子どもが誕生していますから諦めているみたいです。」
「隣の領なのに、ややこしい関係性だな。」
「うーん………
リタ嬢は、男性に対して、
警戒心がありそうだな………
はてさて、どうしたものか………?」
「いっそのこと、エクトール様や、ユージ様に、ご相談してみてはいかがでしょうか………?」
「そうだな、うん。
率直に、相談してみるよ。」
「ええ。その方が宜しいかと。」




