えっ!?獅子の?
「そちらのお方は………?」
「ああ、こっちは、私の護衛だよ。」
「ディオン様にお仕えしています、レオンです。」
今日は、もちろん、レオンも着いて来ている。
さすがに、初めて来る土地。お忍びとはいえ、主人のディオンは、目立つ赤い髪色。
何があるか分からないと心配性な彼は、護衛と称して、着いて来たのだ。
「聞いて良いのか、分かりかねますが………
護衛がいるのに、わざわざ、僕に案内を頼んだ貴方は、いったい、何者なのですか?」
「うーん………実は、お忍び中なんだよ。獅子の一族のひとりだと言えば、分かるかな………?」
「えっ!?獅子の?貴方は、王族なのですか?」
「まあ、うん、そうなるね。」
小さな声で言った言葉に、ユージは驚いた。
〈獅子の一族〉それは、この王国内で知らぬ者はいないからだ。 王族のことだから。
しかし、王族の中に、ディオンがいることは、あまり知られていない。
エルモ兄上の方が目立つからだ。
「名は、ディオン・シェオ・フォン・セイレン・ハリウィムだ。 改めて、宜しくね。」
「つまり、ハリウィム公爵閣下のご子息………?」
「ああ。うん、ハリウィム公爵の次男にあたる。もちろん、嘘ではないから、後日、ひっそり、エクトールに確認すると良い、ひっそりとね。」
「な、なるほど……それで、義兄様は、代わりに僕を案内人に寄越したんですね………?」
「うん、出来れば、他の者に内緒でいて欲しい。イグナシオ殿、エクトールは知ってるけど。」
「承知いたしました。 しかし、なぜ、初対面の僕に、その情報をお伝えしたんですか?」
「警戒心の強いエクトールが、わざわざ君を指名したという事は、君を信用している証だろう?」
「そ、そうなのですか?ありがとう存じます。」
「こちらが、エルナール博物館です。」
「ほう、ここが、国内で、一番広いという………噂なら聞いていたけれど………本当に、広いね。」
「そうみたいですね。王立博物館の三倍くらいの広さだと言われているようです。建物の内部に図書館、会議室、喫茶店などもございますよ。」
エルナール博物館は、スーウィル王国の中で、一番広くて展示品も多い。それは、同盟国から集まった美術品も集まっているからだ。
そのため、この博物館の周りは、辺境伯領内の観光地となって、大変賑わっているらしい。
「5時間はありますから、ゆっくり見ましょう。夕食は、あちらの喫茶店で食べる予定です。」
「うん、分かった。ありがとう。」