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09話 緋宮

今晩、いなくなるのでので早めに投稿しておこうかなー、と

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい

「唯衣と美織さんを探してくれ」

 俺――緋宮(ひのみや)(けい)は、目の前にいる女性に声を掛ける。

 半透明の翠色の美しい女性だ。

 シルフィード。

 それが彼女の名前だ。

 彼女は、ひとつ頷くと鮮やかな旋律を奏で始める。

 ――♪

 さて、こちらも気になるな。

「手がかりはあったか?」

 家の中を散策していた咲耶に声を掛ける。

 すると。

「うむ。僅かに残っている気配に、濃い炎の気配があった。しかも痕跡を意図的に消したとしか思えるぬ不自然な残り方だったのう」

 離れたところからこちらに声がとんでくる。

 !

 ……炎、だと。

「俺にはそんな気配感じなかったが、間違いないのか?」

 俺は、この天狐の実力を知っている。ゆえに、これは確認だ。

「間違いない」

 咲耶も断言した。

 ……。

 ……争った跡、起動停止している四神、破壊されていた黄龍、……そして炎の気配。

 嫌な予感が止まらない。

 と。

〝見つけた〟

 思念波が俺の頭の中に飛んでくる。

「何処だ!」

 風の女王は、簡潔に答えた。

 同時に俺は、……予感の的中を知った。

〝貴方の、実家〟


「なんと!おぬしの実家とな」

 目の前の咲耶の声に、僅かだが愉快そうな感情が混じる。

 ギュッ!

「いたい、いたい、いたい。……何をするのじゃ!」

 思わず、頭の上に付いた獣耳を引っ張ってしまった。

 ……。

 両手で頭の上にある獣耳を押さえ、こちらを「うー」と威嚇する咲耶を放置して立ち上がる。

「何処に行くのじゃ?」

 簡潔に返答を返す。

「実家」

 はらわたが煮えくり返っている。

 今、目の前に親父やお袋、聡がいれば、間違いなく殺していただろう。

 ……。

 2歩、3歩と歩いた時だ、後ろから。

「わらわも行こう」

 そんな声がかかる。

「なんだかんだで、母上殿には何宿何飯も世話になった。娘もいなくなったなら、それはそれでつまらぬ。……何よりこのやり方(・・・・・)は、まこと気に入らぬ」

 ……。

「それに、今のお主を一人行かせるのは心配じゃ」

 ……。

 何度か口を開くが、うまく言葉が出てこない。

 結局。

「好きにしろ」

 と一言だけ告げる。

 感謝を告げるのは恥ずかしい、だがやっぱり感謝をしたい、そう悩んだ末の言葉だ。

 そんな心情を見抜いたのか、それとも先ほどの耳のおかえしか。

「よい、よい。……慧よ、お主、頬が赤いぞ♪」

 からかう様な言葉が掛かる。

 ……やかましい!



 ~形瀬唯衣~

「……ここは?」

 開口一番のセリフだ。

 お腹が痛い、それにどうにも記憶が定まらない。

 記憶を手繰る。

「私……、カレーを作っていて……、それから……」

 !

 嫌いな男の顔が頭をよぎった瞬間全てを思い出す。

「うぐっ……」

 思わず吐き気がこみ上げてくる。

 手で口を押さえ、苦しそうに悶えていると。

「大丈夫でしょうか、お嬢様」

 声がかかる。

 吐き気をこらえて目を上げると、一人の女中が心配そうに様子を見ていた。

「だ、大丈夫です。……お嬢様?」

 ふと疑問がわいたので聞いてみる。

「あっ、はい。実は若様からお嬢様を……」

 と、女中さんが答えようとした時だ。


「起きたんだね!唯衣さん」

 扉の奥から、妙にはしゃいだ声が聞こえた。

「あはは、唯衣さんは相変わらず綺麗だね。本当にそこらの人間とは大違いだ」

 聡だ。

 本来なら、声を掛けるのも、視界に映すのも嫌だが。

「ここは何処です?私をどうするつもり?」

 仕方ないので会話を試みる。

 だが、案の定、聡はこちらの言葉には応じず一方的に話をする。

「大丈夫、大丈夫。何も心配いらないよ。ここは緋宮本家、あの兄さん(ゴミ)も簡単に入ってこれるような場所じゃないさ!あのゴミが唯衣さんに手を出すことはもうない、安心してよ。……ああそれと、後二時間程で式だよ。あのゴミの邪魔が入る前に結婚式を上げようじゃないか」

 !

 今の言葉の中に聞き分けのならない言葉があった。

「……いま……なんて、…………言ったの?式?結婚式?」

 信じたくはない。

 しかし、聡は満面の笑みで。

「そう、結婚式さ。僕と唯衣さんの晴れ舞台だよ!」

 !

 目の前が真っ暗になる。

 一度式を挙げてしまえば、一三家の力で無理やり押し切ってしまうだろう。「形瀬の娘は緋宮のものだ!」と。

 それに「結婚式を挙げた」という事実があれば、他家も納得しざる得ないだろう。

 それでも、抵抗はしてみる。

「私は……」

「唯衣さんのご両親も、式のことは知ってるよ。」

 !

 お母さん、お父さん!

 こちらの考えを読んだのだろう、聡が先手を打つ。

「断らないよね?もし唯衣さんが断るなら唯衣さんのご両親の身の危険は保障しかねるなあ。」

 ……。

 顔を俯けてしまう。

 さらに。

「既に十三家の各当主にも知らせてあるよ、半数以上の家が来てくれるって。突然の割には中々な出席率だね。やはり歴史ある家同士の結びつきだ。それに何と、(すめらぎ)家の姫様も着てくれたんだ。今回のことで、急遽外国から飛んできてくれたんだ。うれしいなぁ、……皇家の姫様がいるならあのゴミも入って来れないしね」

 !

 十三家の当主達の出席にも驚くが、何より驚いたのが。

 ……皇家の出席。

 ――皇家、十三家の頂点。半神半人の血筋、絶対なる力の象徴。

 その出席。

 つまり、十三家全体がこの婚礼を認めた、ということだ。

 それは唯衣の心を打ち砕くのには充分すぎた。

 今の言葉で心が折れてしまった。

 ……。

 黙りこんだ唯衣に満足したのか、髪を撫でながら。

「もう少しで式場まで移動しなきゃいけないし、ウエディングドレスの着付けもしなきゃいけないね♪次ぎあうときは式場だ!今夜が楽しみだなあ。……ふふ、いわゆる新婚初夜。唯衣さんと初夜を迎えられるなんて幸せすぎてどうにかなっちゃいそうだよ♪」

 そんな言葉をかけて来る。

 慧ならここで、「なら、死ね」と言うだろう。

 だが……。

 今の唯衣にはもう言葉を発することすらできない。

 ……。

 唯衣にも夢があった。

 憧れの、ウエディングドレスを着ての結婚式。

 女の子なら誰でも一度は見る夢だ。

 相手は、自分の大好きな彼。

 自分の両親に見守られながら、ブーケを手にキスをするのだ。

 その人と、「生涯をともにする」と誓いながら。

 相手には、自分のウエディングドレス姿を見て「綺麗だね」って言ってもらって……。

 ……。

「じゃあ、また後で」

 聡は自分を抱きしめると、部屋を出て行ってしまった。



 ~緋宮聡~

「じゃあ、また後で」

 目から光が消え、人形のようになってしまった唯衣を残して部屋を出る。

 実に気分がいい。

 あのゴミからようやく奪い取ったのだ。

 ハハハッ!

 笑い声が口から漏れる。

 ……。


 始めて目にしたとき、天使かと思った。

 次に、目にしたとき、自分の想いを自覚した。

 三度、目にしたとき……、兄さん(ゴミ)と楽しげに会話していた。

 その後、会うたび会うたびにゴミと楽しげに笑っていた。

 ……。

 それ以来、ゴミをいたぶることで我慢した。

 一度などゴミを殺しかけたこともある。

 ……。

 ゴミが外国に逃げたときは、ついに来たか!と歓喜した。

 しかし、自分がどんなにアプローチをかけても唯衣さんは応じてくれなかった。

 憎たらしい、だがそれでも愛おしい。

 ゴミがいない以上、唯衣さんは自分のものにしかならないのだ。

 唯衣さんはゴミが戻ってくると信じているが、あのゴミにそんな事は出来ないだろう。

 ハハハ、……ハハハハハッ!

 自分は伝統ある緋宮家の時期当主だ。

 それに自分の容姿には、それなりの自信がある。

 いずれ、唯衣さんも分かってくれるだろう。

 ……。

 父上を通じて、形瀬家に縁談を申し込んだ。

 しかし、形瀬美織が難色を示した、「その申し出は受けられない」と。

 形瀬美織め!

 だが、何度も縁談を持ちかけた。

 この想いは本物だし、唯衣さんを諦めるなんてことは絶対に出来ない。

 ……。

 そんな、折だ。

 緋宮慧が帰国している。その上、形瀬家に居候している。

 と、情報が入った。

 信じられなかった、何度も確かめた。

 しかし、本当だった。

 さらに信じられないのは、無様にもこの国を逃げ出したゴミを、形瀬家が、……唯衣さんが受け入れていることだ。

 自分があんなにアプローチしても駄目だったのに……。

 ……。

 でも、もう大丈夫。

 僕は、唯衣さんを手に入れた。

 両親を人質に取るといった卑怯な手段だったが、まぁ、そのうち許してくれるだろう。

 それに、一度でも式を挙げるといった事実が残れば、緋宮家の権力(ちから)でどうにでもなる。

 僕の、未来は薔薇色じゃないか。

 これで、これで……。


「聡様!」

 !

 呼び声とともに現実に引き戻される。

 僕の護衛の一人だった。

 緊張顔で近づいてくる。

「どうした?」

 苦々しく思いながら、それでも表情を取り繕って尋ねる。

「緊急事態です」

 なんだと?

「形瀬家の屋敷に緋宮慧とおぼしき人物が入っていきました」

 なんだ、ゴミが帰ってきただけか。

 たとえ、ゴミが今の事態に気づいたとしても、なにも出来ないに決まっている。

 なんの力も持たないのだ。

 唯衣さんからは、携帯などの連絡手段は封じているし、その上何重もの結界で覆っている。見つけることなど不可能だろう。

 今頃、右往左往しているだけだ。

「それがどうした?」

 その程度の報告などいらん、と続けようとすると。

「緋宮慧に連れが居ました。金髪で和装をした女性の方です」

 !

 続きを聞いて驚く。

 まず、ゴミに仲間が居たことに驚き、続いて一緒に形瀬の家に来た、という事に驚いた。

「何者だ?」

 思わず、尋ねるが。

「正体は、……不明です」

 ちっ、使えないやつめ。

「まぁ、いい。こちらには皇家の姫君がいるのだ、その者が何者だろうと負けはしない」

 そう、こちらが負ける条件などなに一つないのだ。

「放っておけ」


 そして、ついに迎えた。

 場所は、近場にあった、有名な結婚式場だ。

 席は既に殆どが埋まっている。

 十三家からは円條(えんじょう)家、庚仙(こうせん)家、櫻森(さくらもり)家、(かんなぎ)家、荒神(あらがみ)家、矢月(やづき)家、(かえで)家、そして皇家が出席してくれた、ここに来ていない家からも祝電が送られてきている。

 また、緋宮家の分家はその殆どが出席している。

 ……。

 僕は既に、純白のタキシードに着替えて待機中だ。

「これより新郎新婦の入場です」

 厳かな雰囲気の中、僕は式場の中央まで歩いて行く。

 対面からは唯衣さんが歩いてくる。

 ああ……、唯衣さんのウエディングドレス姿は綺麗だなあ。

 中央にたどり着いた。

 唯衣さんは無表情だ、目に光がない。

 全てを諦めたのだろうか?

 ……まぁ、いい。表情もいずれは元通りになるだろう。

 中央に居た神父が告げる。

「では、これより……」



 ~形瀬唯衣~

 心は既に、冷え切っている。

 憧れだったウエディングドレスを身に纏っているのに、なんの感想も浮かばない。

 ……。

 逃げ出そうとも考えた。

 けど、その度、大好きなお母さんの事が頭の中で思い出されてしまう。

 逃げたい……、逃げたい……、逃げたい、逃げたい、逃げたい、逃げたい!

 何度、同じことを考えたか……。

 でも。

「お母さん、お父さん……」

 何度、同じ結論に達したか……。

 ……。

 …………慧の声が聞きたいな……。

 

「これより新郎新婦の入場です」

 そんなアナウンスが響いた。


 式場の中央に歩いて行く。

 対面から緋宮聡が満面の笑みで歩いてくる。

 嫌だ!

 心の奥底でそんな声がする。

 一歩、また一歩と歩く度に心の奥底から。

 嫌だ!

 と、自分の声が聞こえる。

 嫌だ!

 嫌だ!

 嫌だ!

 ついに式場の中央に辿り着いてしまった。

 中央に居た神父が告げる。

「では、これより……」



 ゴォアアアアアッ!


 神父の声を、上書きするかのように轟音が響き渡った。

読んでいて聡君の下種っぷりに吹いて下さいwww


本日は諸々の都合が重なり、早めに投稿します。

次話は因縁の兄弟対決になります、お楽しみ(?)に~


ついでに謝罪を

先日、某スティグマ似という感想を頂ました。

作者としてはそのつもりはなかったのですが、読み直してみれば所々にている部分がありました。

影響を受けているのは確かなようです。勘違いさせていたら、すみません。


では、では~

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