たった2枚の美しいフィルム
パシャリ。
貴方は、この音を聞く度、毎回のように顔を隠します。故に、私のフィルムの中には、ブレている写真が多いのですよ。何故です。貴方は、こんなにも美しいと言うのに。
私には想い人がおります。普段は、澄ましていますが、ふとした時のくしゃっとした笑顔、凛としている立ち姿、美しい横顔、色白の肌に、よく似合う赤リップ、可愛らしい声、貴方の全てに惚れたのです。初めて出会った時から、貴方を写真に収めようと努力致しました。盗撮ではありません、ただ風景と同じように、遠くから撮ろうとしているだけなのです。なに、それが盗撮だって?そう言われたら仕方がありません。どっちにしろ、それも全て失敗しておりますがね笑。
私は、人生で1度目の勇気を振り絞り、彼女に告白を致しました。断られると思っていたため、彼女が頷いた時には、私の方が彼女より驚いてしまいました。彼女は、驚きつつ、私の阿呆面に対し、笑っておりましたよ。そして、記念にと言って、写真を撮ろうと致しましたが、やはり彼女は、写真は嫌だと言って、写真の誘いを、拒否致しました。
そして、人生で2度目の勇気を振り絞りました。彼女に求婚を申し出たのです。彼女は、勿論頷いてくれました。我々は接吻をし、結ばれたのでした。今回ばかりは、受け入れてくれると、思っておりましたので、驚くことはありませんでしたが、喜びは隠せませんでした。また、記念ということで写真にお誘い致しましたが、やはり断られてしまいました。
彼女と、家族になった私は、彼女を絶対フィルムに収めたいと思いましたので、今度こそ盗撮を試みました。ですが、彼女とは長い付き合いですので、全て見つかり音を聴いただけで、すぐに顔を隠してしまいました。どうしても、私は彼女の写真が撮りたいのです。ですから、1度本人に聞いてみました。彼女は、くしゃっと笑いながら
「だって、お写真なんて恥ずかしいじゃありませんか。」
彼女の答えは、とても可愛らしく、愛おしい。そんな彼女をやはり写真に収めたい。その瞬間に、念願の彼女の写真を撮ることができたのです。彼女はとても驚いておりました。まさか、この瞬間が撮られるとは、思ってもみなかった。そのような顔でした。しかしながら、彼女は、恥ずかしそうに、
「そのお写真、後で私にも見せてくださいね。」
ただこう言ってくれたのでした。その後も、写真を撮ろうと致しましたが、撮ることは出来ませんでした。
彼女の写真、今思い返しますと、ほんの一枚しかありません。あのくしゃっと笑った笑顔。もう少し写真を撮らせてくれても良かったのではないでしょうか。白すぎる肌に、真っ赤なリップ。嗚呼、なんて美しいんだ。
パシャリ。
今度こそ、しっかりと撮れましたよ。
そうですね、そろそろお時間です。さよなら。愛する人よ。