黒い犬と白い猫 (Ⅱ)
「すごい」赤屋は感嘆の声を漏らした。
彼女の汚れのない真っ白の服のせいかもしれないが、この世のものとは赤屋には思えなかった。
今の日本・・・謎の飛行物体が落ちてきて東日本の治安は最悪だった。
落ちた場所が東京だったのが悪かったのかもしれない。
東京に一極集中している日本だったので飛行物体が落ちてからは都市は京都に移された。
そして東日本は完全に危険区域に入った。
毎夜、毎夜とブレーンが出現するから仕方がなかったのだ。
最初は関東地方だけだったが10年もの間に出現地域をブレーンは増やしていた。
今の西日本は全く被害はないがその内ブレーンが出現するだろう。
東日本で決まっている事は一つだけ
『日が落ちたら外に出るな』
昼間はブレーンも出ないようだが夜になれば出現する。
そのせいか、夜は悪党のパラダイスだった。警察連中も死にたくないのだろうか何もしない。
結果、東日本の治安は最悪だった。
しかし、この少女は何かが違った。
この治安最悪の東日本にいるがこの少女だけ汚れていなかった。
「天使何ているならこいつのことを言うのか・・・」
赤屋は少し声を漏らしてしまった。
「こいつを破壊・・・依頼人は何を考えている」
今まで赤屋は人を殺したことがないのもあったが、この少女を殺すことはとうてい出来ない。
スッと少女に赤屋が手を伸ばそうとすると車内が揺れた。
ブスゥーと音ともにトラックが動くことがわかった。
「くそ、途中下車しろというのか」
赤屋に少女を抱えて逃げることは正直難しかった。
「だけど、置いて行けないよな」
心の中で赤屋は決心すると後ろを向きトラックの壁に自分が通れるほどの円を指でなぞった。
亀裂が入り上手にその部分だけ外に落とさずにトラックの中に入れた。
「後は、こいつを抱えて外に出るだけか」
赤屋は少女の方を向き彼女の背中に両手をまわし鉄の箱から取り出した。
「軽いな・・・」身長の割にその重さ、赤屋はついつい声を出した。
穴が開いている外の方を見ると街灯の光がほのかに光っていた。
ダンッ とトラックを蹴って赤屋は外に飛び出した。
赤屋は道路に着地した瞬間に足を屈め衝撃を和らげた。
左の方からキキィー!と車が急ブレーキを掛けたのが分かった。
「おい!あいつサンプルを持ってトラックから出てきたぞ!」
トラックの後ろを護衛してた車から男が出てきて叫んでいる。
「遅いんだよ、馬鹿どもが」
前方にあるガードレールを飛び越え路地裏に赤屋は入って行った。
後ろから4、5人走ってくる音がしたが、赤屋は気にせずに暗い道を突き進んだ。
真っ白な少女を抱えて・・・。
午後9時50分 目標奪取




