黒い犬と白い猫
ジリリリリリと部屋中に携帯の音が鳴り響いた。
畳六畳と小さな部屋に中央に古びた机、窓側にはテレビが置いてあるだけだ。
家賃5万のアパートだから文句は言えないのだった。
「んー?」畳の上にそのまま寝ていた赤屋はゆっくりと携帯に手を伸ばす。
「はい、もしもし」
少し荒い声を出しながら赤屋は電話に出る。
電話からはいつもと同じノイズ音と一緒に依頼主の機械音が聞こえてきた。
「こんばんは?かな。また次の依頼だ」
(ッチ、また仕事か・・・)
心の中で舌打ちをしながら赤屋は電話の方に集中する。
「次の依頼はどんな内容で?といってもまたブレーン退治ですよね?」
「いや、今回は別の仕事だ。ある物を奪取、又は破壊して欲しい」
(こいつ俺の能力を知らないのか?)
赤屋の能力は手から刃物を出す・・・というのが普通だが実際のところ手で触れれば金属を色々な形に出来る。
そんな能力を物を奪い取るのに使えるとは考えにくいと考えた赤屋だった。
「別に能力者を使う必要はないのでは?しかも、俺の能力は金属を色々な形に変えれるだけです」
赤屋が否定するもののすぐに依頼主は応答してきた。
「奪う・・・といってもある一台のトラックに入っている物を奪取するか破壊するだけだ。確かに他の者に頼んでもいいが、昨日言ったとおり君は金さえ貰えれば何でもするだろ?」
確かにそうだった。生活するうえで金は必要不可欠。赤屋も他の仕事があるわけではなかった。
「わかりました、その依頼受けましょう」
最初から断るつもり何て赤屋は全くなかった。
(しかし、二日続けての依頼とはまた妙だな)
「それでは物の奪取、又は破壊は午後9時に決行してくれ。詳しい事は君の家の前に置いてある資料を読んでくれ。それでは」
「ちょっと・・・」と言う前に携帯は切られた。
少しの間携帯を見ていた赤屋だったがすぐにポケットに閉まった。
「俺が依頼を受けなかったらどうするつもりだったんだ」
そう呟きながら赤屋は立ち上がり、窓の方に歩いて行く。
「もう夕方か・・・」
カーテンから漏れる夕日が赤屋には見えた。
例の物奪取、又は破壊決行:残り3時間
「ハァーハァー午後8時50分、ぎりぎりだな・・・」
真っ暗の倉庫の中で荒い息遣いが静寂をやぶっていた。
倉庫と言っても学校の体育館ほどしかなく段ボールがそこらじゅうに積み上げている。
赤屋は持っていた肩下げカバンの中から茶色の封筒を出した。
封筒の中には資料が入っている。トラックの色、護衛の車が何台かなど色々書かれていた。
「トラックの色何ていらないだろ・・・にしても護衛がいるからこんな物騒な物を置いてあったのか」
赤屋は自分が握っている手榴弾を見ていた。
「今のご時世だから日本でもこんな物手に入るのか・・・」
一人考えているとガァーという音が聞こえてきた。
「ほとんどきっちり9時にくるか・・・」
段ボールの陰から車を見ると、出口から普通車・トラック・普通車と並んでいた。
ドアを開けて外に出る様子はなく何かを待ってるようだった。
「ちょうどいい、こちらの方がやり易い」
カチッ と手榴弾の安全ピンを抜きレバーを一気に引く。
自分のいる反対側に赤屋はおもいっきり投げるとカランカランという音が聞こえた。
バァーンと気持ちがいいくらいの音が鳴ると今度はドアが開き、黒スーツの男達が爆発した方向に走って行った。
その間に赤屋は段ボールの物陰に隠れながらトラックの後ろに走って行った。
トラックを開けようとするとガンガンと開かなかった。
「やはり鍵がかかっているか・・・」
そう言いながら赤屋は鉄で出来ている扉に人差し指で円を描くとその部分に亀裂が入り、押すとぽっかりと穴が開いた。
赤屋は頭を屈めて中に入る。
「おい!何だこの爆発は!誰かの罠か!」
爆発があったところから一人の男が大声をあげていた。
「誰かがやったから爆発が起きたんだろ。馬鹿どもが」
赤屋は呟くと円型に切られた鉄板を掴み腰を屈ませて穴が開いてる位置に戻し、切断面にまた指を押し当て接合する。
「これで入ったとは思わないだろう」
そう言いながら立ち上がり後ろを見ると大きな鉄でできた長方形の箱が置いてあった。
「これがあいつが言っていた物か・・・」
暗がりでよく見えないものの大きさは横が3m、縦が1mほどだった。
「奪取にしても壊すにしても一度中を見てみるか」
そう言いながら赤屋は箱の横に来てみるとボタンが10個程度あった。
開・閉、その他数字のボタンが怪しく光っていた。
開のボタンを押すとプシューと音がなり真ん中から左右に開いた。
「さて、何が入って・・・・・・何だこれ」
そこには一点の汚れもない真っ白な服を着た少女が眠っていたのだった。
午後9時20分 目標発見




