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失恋令嬢はハーレム王から愛される  作者: 凛蓮月
結婚してからの事。
33/53

【閑話】それぞれの思惑

 

【side ベルンハルト】


「ミアを筆頭夫人にする」


 俺の言葉は目の前にいるジュードとハリードに届く。


 ミアと正式に結ばれたのは数日前。

 バカみたいにサカって手放せず、三日三晩部屋に篭りきりだった。


 腕に閉じ込めているだけでどうしようもなく気持ちが溢れてくる。


『好き……ベルンハルトが大好き』


 口付けも肌も全身使って俺を愛していると叫ぶミアを、心の底から愛おしいと思った。


「さようですか。ミア様は宰相家の養女でありますし、後ろ盾は問題無いでしょう。

 あとは陛下と裏王家の承認があれば、めでたくミア様は筆頭夫人ですね」


 ジュードはさほど驚いた風でもなく、淡々とこれからやるべき事を述べた。そして隣にいる男を横目でちらりと見る。


 ジュードの隣で口を半開きにしたまま固まっているのはハリード。

 ──裏王家の筆頭だ。


「ハリード?」


 呆けたまま固まるハリードの名を呼ぶと、数回瞬きをして口をつぐんだ。


「あ……俺だけ、の判断じゃ、決められないので、一旦持ち帰っていいですか」


 ハリードにしては珍しく覇気の無い答え。

 そもそも筆頭夫人にしても良いか、というのは傍系王家筆頭の独断で決めれるはずだ。

 それを持ち帰るとはおかしな話。


 だがいざという時の為のスペアが裏王家。

 意見は尊重しないといけない。


「…分かった。ミアの意思を確認したら今度の議会に通す。それからこれはまだ未確定だが」


 ミアを愛し始めた頃から俺にはこの先どうするかを見据えだした。


 王位にいるうちは避けて通れないハーレム問題。

 最初から慣れない制度ではあったが。


「ミアを筆頭にしたらいずれハーレムは解散させる。手始めに、後宮にいる父上や兄上たちの手付きの女性たちは順次後宮から出られるように手配してくれ」


 一度も(オレ)が通わず、ずっと縛り付けられていた後宮の妾たち。

『箔が付くから』と言われそのままにしていたが、やはり俺には必要ない。


「かしこまりました。ハーレム解散、後にミア夫人以外と離縁なさるとしても、王位継承権はどうなさいますか」


「それはザラとザイードの意思を尊重する。

 夫人たちが望むなら離縁するし、残るならそれでもいい。

 ただ、俺は今後ミアの所以外には行かない」


「納得しますかね」


「勝手言ってるのは分かってる。根気よく説明する。ミリアナは既に閨辞退してるからあとはザラとフラヴィアだな」


 一人だけを愛する事はハーブルムの歴史としても珍しい事かもしれない。

 親に捨てられ愛を知らなかった俺がたった一人を求めるとは、人生何が起きるか分からないな。



『ただ一人だけが欲しい。他の女性などいりません』


 いつかのレアンドル・クレールの言葉を思い出す。

 あの時は理解できなかったが今なら分かる。


 ミアを幸せにしたい。

 その時隣にいるのは俺でありたい。

 そう願っている自分に驚きはするが悪くないものだ。


「話は以上だ。よろしく頼む」


「「御意に」」


 一礼してジュードはそのまま執務に、ハリードはスッと消えた。





【side ハリード】


『ミアを筆頭夫人にする』


 先程の陛下の言葉に酷く動揺する自分がいた。


 ミアは最初に毒を仕込まれた時からの付き合いだ。

 毒が仕込まれた食事を下げさせ新たに持ってきたものを俺が毒見しただけであっさり信用してたいらげた。

 俺が嘘をついてる可能性とか微塵も考えてないかのようにバクバク食べていたがその所作はきれいで思わず見惚れた。


 その後陛下が夫人たちを集めた会議を見て顔を真っ青にしたと思ったら、陛下に


『私、毒耐性を付けたいわ』


 そう言った。


『いずれは毒見役なんていらないように私も耐性つけたい』


 俺は別に毒見役でも構わなかった。慣れてたし。

 けど、ミアはそれを良しとしなかった。


 初めての事に戸惑った。

 ハーレムの愛妾を母に持つ俺は、陛下とは異母兄弟にあたる。その地位は第十王子とかなり低い。

 〝代わりはいくらでもいる王子〟

 それが俺のポジションだ。

 それでも母親はまともな方で、俺を守ってくれてたと思う。


 傍系王家はどう足掻いても王位とは縁遠く、むしろ王家の影として動かされる。

 筆頭になればそれなりのチカラは貰えるが、それだけだ。

 俺も幼い頃から影としての訓練を積んでいた。


 だが14の時、母は当時の王が気紛れに放った刺客の凶刃に倒れた。

 一時は寵愛を受けていたはずの男から遊び半分で殺され失意のうちに人生に幕を閉じなければならなかった母をあわれに思った。


 俺は誰も愛さない。


 陛下も同じ類だと思ったのに。


 モヤモヤする。


『あんた、ミリアナ姉様に閨事情まで筒抜けってどういう事よ』


『ああ、聞かれたから答えただけだ』


『というか何で知ってるの!こわいわよ!』


 いつかのやり取りを思い出して笑みがこぼれた。

 くるくる変わる表情、物怖じしない強さ。

 それなのに俺が毒見しようとすれば不安そうに見てくる。

 そんなあいつは見てて飽きない存在だ。

 ずっと側にいるのは、行動が面白いからだ。


 ──そう、思っていたんだが。



『ミアを筆頭夫人にする』



 なぜか襲う胸の痛みに戸惑い、俺は顔を両手で覆った。





これにて第二章、終幕です。

次回より第三章に移行します。


第三章【筆頭夫人になる事。】

楽しみにお待ちくださいm(_ _ )m


いつもお読み頂きありがとうございます。

中々定期的に更新できずすみません。

思いの外長くなっていますが飽きずにお待ちして下さる方がいらっしゃるならば完結まで頑張ります。

よろしければお付き合い下さると嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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