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失恋令嬢はハーレム王から愛される  作者: 凛蓮月
結婚してからの事。
31/53

本当の妻になりたい

 

 あれから熱が出て、意識が朦朧とする中色んな声を聞いた。


「もう!私ずっと待ってたんですよ、陛下!

 ミアの看病は私がします」


「俺だって側にいたいんだ。ここは譲れん」


「陛下、執務が溜まっています」


「書類は全部ここに持って来い」


「病人の側で仕事しないで下さいよ!」


 ミリアナ姉様とベルンハルト、たまにジュードさん。

 きゃあきゃあ言い合いしてる。

 ちょっと頭に響くけど、何だか平和で幸せ。


 誰かが額のタオルを変えてくれる。

 心配そうに、頬を撫でる。

 身体が弱って心細い時は誰かが側にいてくれる事が嬉しい。



「……んっ…」


 冷やりとした感触が、喉を通る。

 熱に火照った身体にはちょうどいい冷たさ。

 私はもっと欲しくて離れていくものを追い掛けた。


「…………」


 誰か何か言ってる。

 でも、どうでもいい。私はその冷えたものが欲しい。


 すると再び口に何かが入って来た。


 ぐえっ、苦っ!?

 そして、また冷たい感じ。……あ、これ水だ。


「み、ず……」


「大丈夫か?今薬を飲ませたからな」


 この声はベルンハルトだ。

 柔らかくて低い、落ち着いた声。

 いつの間にか、好きになってた声。


 ハーブルムに来て半年以上経過した。

 それが長いのか短いのかは分からない。でも、確実に私の中の想いは変化した。


 アランの事は好きだったよ。

 初めてをあげたの後悔してないし、何度も抱かれたのも嬉しいだけだった。

 虚しさはあったけれど、私が望んでいたんだ。


 でも、私はこの手に惹かれた。

 私を守る、大きな手。


「ベルンハルト……」


「どうした」


「好き」


 まだ熱はあって、意識は朦朧としているけど、でも、何故か視界はクリアで。


「私、あなたが、好き」


 一度本人の目の前で口にしたら、止まらなくなる。


「ベルンハルト、好き。大好き」


「み、ミア、その」

「熱が下がったら」


 お願い。


「私をあなたの妻にして」


「ミア……」


「あなたの、妻に、なりたい」


 熱に浮かされてか緊張からか、ふわふわする。

 ベルンハルトは固まったまま、口を開けたり閉じたり。

 でも、真面目な顔になって。


「分かった。熱が下がったらお前を妻にする。だから早くよくなれ」


 そう言って、ベルンハルトは頭を撫でた。

 私を見つめる瞳が優しくて、私は安心して眠りについた。



 それから三日三晩、熱が下がらなくて。

 寒かったり暑かったり忙しい身体だった。

 でもベルンハルトがずっと側にいてくれたし、夜は抱き締めてくれた。




「心配したわ、ミア!」


 熱が下がって容態が安定してからミリアナ姉様もかいがいしく世話をやいてくれる。

 今はベルンハルトが大臣たちと会議をしてるから看病はミリアナ姉様に交代した。


「もう身体は大丈夫よ。解毒もされてるし、熱も下がってる」


「ありがとう、ミリアナ姉様」


「どういたしまして!……無事で良かったわ」


 ミリアナ姉様は少し瞳を潤ませた。何だか私まで泣けてくる。


「そう言えば、覚えてる?」


「え?何をですか?」


「ミアが寝てる間に、ミアは正式に私の義妹になりました!」


 にっこり笑って伝えられたけど、私の頭の中ではハテナが沢山降り積もった。


「あ、夫人の関係からじゃないわよ?

 ミアはうちの実家の養女になったの。見せかけだけだけどね。つまり宰相家がミアの後ろ盾」


 私は驚きのあまり目を見開き、言葉を失った。

 まさか本当にそうなるとは思ってもなかった。


「ミアは一旦、イーディスのご両親の籍から家に入ってから嫁いだ、って風にしたのね。

 これで私も堂々とあなたを守れる」


 ミリアナ姉様の言葉は嬉しくて、思わず涙が出そうになった。


「ま、ザラ様はこれからおとなしくなりそうだけどね。……まだザラ様のお父様もいらっしゃるしね」


 ボヤくように呟くミリアナ姉様の言葉はよく聞き取れなかったけど、でも義姉になってくれた事は心強かった。


「じゃ、姉様から早速アドバイスするわね」


「なあに?」


 そうして耳打ちされた内容は確かに大きな声では言えず、さすがの私も顔を真っ赤にして最後の方では口元を覆うくらい刺激が強いものだった。





 それから一週間くらいして。


「今日はミアと過ごす」


 晩餐の前の恒例の告知。

 食事はザラ様の件が無くなってからは以前のように夫人たちと摂ることになった。

 勿論ザイード様もザラ様の隣に座って乳母と侍女の介助を受けながら食事している。


 そんな中初めての私との告知。

 他の夫人方はしれっとしているけれど、私は思わずカラトリーを落としそうになった。


 ミリアナ姉様は苦笑して「がんばれ」と口を動かし、ザラ様は飽きれたように溜息をついた。

 フラヴィア様は相変わらず読めない。ただ微笑んでるだけ。


「お、お待ちしております……」


「ああ」


 消え入りそうな返事をして食事を始めた。

 今日の食事は豪華だったけれど、味は覚えてない。

 あ、改めて『する』って思うと緊張が走る。

 ど、どうしよう。

 どうしたらいいんだろう。

 前はどうしてたっけ。

 確か空き教室で……と思い出してやめた。

 前の事は参考にならない。

 よし、全部ベルンハルトに委ねよう。

 閨教育は『殿方に任せましょう』が基本だった。


 あ、でもミリアナ姉様に教えてもらった事は確か女性も積極的に……


 そこまで思考して私の顔は真っ赤になって汗が出てきた。

 う、

 うわわわわわわ、何か、改めて実感したらすっごく恥ずかしくなってきた。



 青くなったり赤くなったり白くなったりぽやーっとしたり。


 そんな私の百面相を、それぞれが様々な様相で見ていたなんてその時私は舞い上がり過ぎて気付いてなかった。



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