表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失恋令嬢はハーレム王から愛される  作者: 凛蓮月
結婚してからの事。
15/53

早速の洗礼

 

 翌朝。


 起きたら目の前にベルンハルトの寝顔があって。

 そのきれいな顔を見ていると扉がノックされた。


「第四夫人様、おはようございます。朝食をお持ち致しましたが、如何致しましょう」


 えっ、もう!?

 てか王様寝てるんですけど!?


「あっ、少し待って下さい!今準備しますので…」


 慌てて寝台から降りようとすると、寝惚けたベルンハルトから引っ張られた。


「ちょっ、ベルンハルト様!朝食!」

「う〜〜ん、朝食は……お前…」


 朝からなんていう言葉を!?


「戯れはお止めください!ちょ、くすぐったい、こら!」


 サラサラの髪が首元を撫でる。

 恥ずかしいんですが!


 ベルンハルトは一向に起きないし、私は寝台を降りれないので朝食は一旦下げて後程持って来て貰うことにした。


「もう……何なのこの大きい子どもは…」


 朝弱いのかしら?

 寝起き悪いだけ?

 彼の方に向き直り、寝顔を見つめる。

 無防備にすやすや寝てるんですけど……。


 睫毛長いなぁ。

 髪もホント、さらさらだし。

 肌もすべすべ。

 思わず頬に手を伸ばし触れてみる。


 なんだか心がほわほわする気がする。


 するとその手を掴まれ、再び抱き寄せられた形になった。


「……もう、起きてるんでしょう?」

「今起きた」


 ぱちりと目を開け、視線がぶつかる。

 何だかおかしくなって思わず笑ってしまった。


「おはよう」

「おはよう。…お前は笑ったら可愛いな」

「笑わなくても可愛いでしょう?」

「そうだな。うんうん、可愛い可愛い」

「バカにしてるの?むぅ」


 ははは、と笑いながら私の瞼に口付けて、ベルンハルトは身体を起こした。


「朝食は二人分用意してもらおう」


 そう言いながらメイドを呼び、準備してもらう。


 備え付けのテーブルに対面で座ると、間もなくして朝食が運ばれて来た。

 メイドがよそってくれたサラダにスープ、ふわふわのパン。

 寝起きだけれどいい匂いにお腹が空いてきた。


「いただきます」


 先にベルンハルトが食べ始め、私もパンに手を伸ばして食べ始めた。


「美味しい!ふわふわ!」


 パンを食べ、スープを食べようとスプーンを手にすると


「ミア、スープは口にするな」


「えっ」


「毒入りだ」


 ベルンハルトは食べてしまったのか、グラスの水で口をゆすいでいた。


 って


 えっ


 毒?


 毒ーーーー!!??


「……結婚初夜明けの朝に毒を仕込むとは…」


 わああ、めちゃくちゃ怒ってる。


 それからベルンハルトの行動は早かった。


「影、いるな。ミアの朝食に毒が盛られた。至急犯人を探せ。あと朝食の代わりを持て。それから朝食後大臣達と夫人と後宮全員集めよ」


 どこからか現れた『影』と呼ばれた男に告げると、ベルンハルトは朝食を下げさせた。


「ミア、すまんな。すぐに代わりを用意させるから少し待っててくれ。念の為影を置いて行く。護衛になるから安心しろ。

 ハリード、ミアを頼む」


 そう言って彼は部屋を出て行った。

 呆然としてその後ろ姿を見送る。


「あんた歓迎されてないみたいだな」


 残された『影』の男がにやにやしながら話し掛けてきた。


「……そうみたいね」


 ハーレム持ちにいきなり異国からの新たな夫人。

 歓迎されるとは思ってなかったけど、まさか食事に毒を仕込まれるとは想定外だわ。

 母国じゃこんな事考えられなかった。

 もしベルンハルトが一緒じゃ無かったら。

 途端にぶるりと身体が震えた。


 少しして、代わりの朝食が運ばれて来た。

 正直さっきの事で食欲は湧かない。

 でも残すとか勿体無い。

 どうしようか迷っていると、影の男が一匙掬ってスープを飲んだ。


「今度は大丈夫だ。食えよ。腹ごなしは大事だろ」


 って言うか主人の食事食べた!?


 ……いや、毒味したのね。

 そこまでしてくれたなら食べない選択肢は無かった。


 改めて席に着き、「いただきます」と言って食べ始める。


 私に毒を盛った犯人と対峙するかもしれない。

 戦うならお腹空いてたら力が出ない。

 食べてたら段々腹が立ってきたわ。

 同じ事返そうかとしても、私に毒を盛る勇気なんて無かった。


 ……

 そもそも勇気の前に毒も無いわ。


「……お前、よく食えるな…」


 優雅にむしゃむしゃ食べてると、戸惑った風の影の男がぽつりと喋る。


「せっかく用意してくれた物を残すなんてできないでしょう。食べれるものは残さず食べるわよ。作ってくれた方に失礼だもの」


 そうしてふわふわのパンを千切って口に入れる。


「へー。身分の高い女なんて、好き嫌い激しくて体型がどーのとかってちょっとしか食べない奴ばっかなのに。

 お前おもしれー」


 影は顎に手を当ててにやにやしている。

 何この人キモチワルイ。


「ごちそうさま」


 出された全てを胃に収め、私は立ち上がる。


「着替えたいのだけど。貴方はレディの裸を見る許可は得てるの?」


 影の男に向き直る。

 存外に『出て行け』と言ってるんだけど、通じるかしら?


「ああ、メイドを呼ぼうか。外にいるから終わった頃にまた来る」


 あら意外と素直。


 ハリードが出てすぐにメイドが入って来て着替えを手伝ってくれた。


 顔を洗ってシャッキリして。

 いざ出陣!と思ったら椅子に座らされお化粧もされる。

 鏡には異国風の私がいた。何か見慣れない。


「へぇ。ちったぁ見れる顔になってんじゃん」


 ハリードがニヤリと笑った。

 ホント何なのこの人。


「じゃあ、案内して」


 私はハリードをぎっと睨み付けた。

 今から戦場に行くのだ。

 誰が私に毒を盛ったのか暴いてやるわ!


「あんた気ぃ強えな。来な。特別席で見せてやる」



 連れて来られたのはベルンハルトが召集をかけた会議室の中、では無く。


 会議室の隣の一面がガラス張りになった部屋だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ