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失恋令嬢はハーレム王から愛される  作者: 凛蓮月
結婚する前のこと。
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第三夫人ミリアナ

 

 ベルンハルトは大臣達と話があるからと私の髪に口付けを落として退室した。

「あとはミリアナに任せた」と言い残して。


 女性たちも退室すべく徐々に準備を始めている。



『今夜はザラのとこへ行く』


 ……うん。

 別に、奥様なんだから何らおかしい事は無い。

 ザラ様……と呼んだ方がいいよね。私の方が後から来たんだし。


 ザラ様はベルンハルトの奥様。

 だから夜、夫が妻の所へ行って、夫婦のアレコレしてても、それは普通の事。


 じゃあ、今の私は何なんだろう。


 一ヶ月後に結婚するから婚約者?

 ベルンハルトは奥様のいる人だから──愛人…?


 ドクリとする。

 指先が冷たくなる。


 やだな。

 今更「ハーレム持ちの人」っていう実感がひしひしと押し寄せる。

 私は沢山いる女性たちのうちの一人。

 ……後宮に押しやられたんじゃなくて、妻として迎え入れられる事は不幸中の幸いだったかもしれない。


 チラリとザラ様を見てみる。

 淡い薄紫の髪に蒼い瞳、スラリとしてるのに出てるとこは出て腰は細い。でも肉付き悪い訳ではない。

 雰囲気的に産まれつき身分の高い女性に見える。

 そのザラ様は、自分の侍女や護衛たちに囲まれて退室しようとしている。


 ザラ様は一瞬私に目をやり──僅かに口角を上げ立ち上がる。


 目が合った瞬間、私はカッと顔が熱くなった。


 そして心無しか誇らしげな顔をした侍女たちを引き連れ、ザラ様は退室して行った。



 なにあれ。

 なにあれなにあれなにあれすっごくやな感じ!

 何?

 今夜ベルンハルトに選ばれた事がそんなに優越感なの?


 そんなムカムカしている私に、スッと影が差す。


「相変わらずやーな感じねー」


 唇を尖らせてショートカット美人がザラ様に向かってべーっと舌を出した。

 えっ、大丈夫なの?

 ザラ様振り向かないで下さいね!と私は内心ドッキドキだった。

 けどザラ様たちは振り返ることも無く、そのまま退室した。


 ショートカット美人は私に向き直り、にっこり笑う。


「初めまして、私はミリアナ。この国の宰相の娘で、陛下の第三夫人です。よろしくね」


 にっこり笑ったまま、手を差し出してきたので、戸惑いながらも手を取った。


「初めまして、ミアと申します。イーディス国から来ました。よろしくお願いします」


 よし、どもらないで言えた。

 これからできればベルンハルトの奥様たちとは仲良く、まではいかずとも、恨まれる事の無いように過ごしたい。

 その為には印象は良くしておいた方がいいと思い、私はミリアナ様に笑顔を返した。


 ちょっとばかり、ぎこちなくなってしまったのは緊張からだ。


 ミリアナ様は目を輝かせてニコニコしている。

 私より少し背が高いけど、やっぱりスラッとしてるのに出てるとこは出てるし腰は細い。

 ザラ様も、もう一人の黒髪美人妻さんも、露出の高い服装だし、セクシーな女性が多いのかもしれないと思った。


「じゃあ、ミア、早速あなたの部屋に行こっか♪こっちおいで」


「えっ、ちょっ」


 ミリアナ様は手を繋いだまま、歩き出す。

 なんか、積極的な方だなぁ。


 廊下を歩き、使用人らしき人に出会えば、みんな手を止めて頭を下げる。

 どうやら使用人たちからいびられることは無さそうかな?なんて、ぼんやりと考えてしまう。


 そうこうしてるうちに、部屋の扉の前に着いた。


「あなたの部屋はここね。

 陛下から速達が来て、すぐに押さえたの。ザラ様に睨まれる前に、ね。

 ちなみに私の部屋は3つ離れたとこ。

 ミアの部屋、ミアの衣装部屋、物置2部屋、私の浴室、私の部屋って並びよ。

 だから、互いに部屋にいる時の声は聞こえないから安心してね」


 その言葉に安心する。

 プライバシーの配慮が有り難い。


「密談してても聞こえないわよ」


 み、密談!?

 秘密の?

 それとも。


「ミアもだけど、私もね」


 やっぱりにっこり笑ってる。

 ミリアナ様は読めない。

 今のところは恨まれてはいないみたい…?


「中入ろっか」


 かちゃりと扉を開けて、中に入る。


 ふかふかの絨毯、座り心地の良さそうなソファ。

 白い寝具が横たわる広いベッド。


「とりあえず私の趣味で揃えてみました。気に入らなければいつでも変えていいからね」


「いえ、素敵です。私には勿体無いくらいです。……ありがとうございます」


 だって、いきなり異国から来た4人目の妻に、不感情は抱いてたらこんな素敵な部屋にならない。


「そう言ってもらえて嬉しい限り。

 こっちの扉が衣装部屋ね。で、反対側が洗面、トイレ、浴室。で、向こうは専属侍女ができた時の待機部屋」


 さ、さすが一国の王、ここで今すぐ暮らせる高待遇。

 ……まぁ、ここで暮らすんだけど。


「こんな感じかな〜。なんか聞きたいことある?」


「い、いえ、今のところは特に……」


「そっ?まぁ来たばかりだしね。今日はゆっくりしてて。晩餐のときにまた会いましょ。宮殿内はまた明日案内するから」


 そう言って、ミリアナ様は部屋を出た。



 とりあえず、私はふかふかのソファに座る。

 国から持ってきた荷物はいつの間にか部屋に運び込まれていたみたい。


「…………」


 うん、大丈夫。


 とりあえず、ミリアナ様は悪い人では無さそうで安心した。

 ザラ様は……ちょっと怖い。

 黒髪美人様はまだ分からないけど、神秘的な方だった。


 三人の奥さんのうち、一人でも仲良くできそうで良かった。

 私は呑気にそんな事を考えていた。



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