第92話 【BLACK EDGE 其の92 飴玉】
BLACK EDGE
著者:pirafu doria
作画:pirafu doria
第92話
【BLACK EDGE 其の92 飴玉】
グリムに新しい武器を渡したアルファは残りの二人にも聞いてみる。
「君たちは新しい武器いらないの?」
するとシャドーとヒートは、
「いらない」
と答えた。ヒートが続ける。
「私の場合、能力的に武器は使えないしね」
ヒートはそう言って左手を見る。
ヒートの術は左手に熱をためる能力だ。運動をすればするほどその温度は増していき、強力になっていく。
しかし、ヒートの左手はその能力の特性上、武器を持つことは難しい。それにヒートのメインとなる武器は素手での戦闘だ。
「まぁまぁ、せっかく作ったんだから見ていってよ」
アルファはそう言うと奥から何かを持ってきた。
それはカラフルな紙に包まれた丸い玉。アルファはそれをヒートに渡した。
「これは?」
「これもまだ試作段階なんだが、ヒート能力をカバーするものだ」
ヒートは試しに一つ袋を開けてみる。すると中から出てきたのは、赤色の飴玉。
「君の能力は効果を発揮するまでに時間がかかる。だからそれをカバーできるようにした。試しに舐めてみてくれ」
アルファはヒートに飴玉を舐めるように進める。ヒートは飴玉を口に入れてみる。舐めてしばらくするとヒートの左手に変化が起きた。
「これは……温度が上がってる?」
「そう、この飴玉で温度を急激を上げることができる」
ヒートの能力は熱を左手にためる能力だ。しかし、その能力を発動するためには体温を上げる必要がある。
そのためヒートは戦闘を行う前に激しい運動を行わなければならないのだ。
後半になればなるほど強いヒートの能力だが、前半で温度が上がるまで何もできないのは厳しい。
だからこの飴玉で一気に温度を上げられるようにした。
「これは使えるな」
ヒートは嬉しそうに飴玉をポケットにしまう。だが、そんなヒートにアルファは忠告する。
「便利なアイテムだが、まだ分からないことが多い。使用は一つずつにして欲しい。それ以上舐めるとこちらからは補償できない」
つまりは一つずつしか舐められないということだ。だが、それでも十分だ。今の左手の温度は百度ある。一度にこれだけ上がれば十分に戦える。
「分かった。使わせてもらう」
グリムとヒートは新しい武器を貰った。そんな様子を見ていたシャドーはさっきはいらないと言ったのだが、少しだけ期待してしまう。
「なぁ、アルファ、俺には武器は……?」
するとアルファは笑顔で答えた。
「ないよ。シャドーのは間に合わなかった」
シャドーの動きは固まった。




