第76話 【BLACK EDGE 其の76 馬車を買いたい】
BLACK EDGE
著者:pirafu doria
作画:pirafu doria
第76話
【BLACK EDGE 其の76 馬車を買いたい】
「これで足りるか?」
赤毛の少女が短パンの裾を上げると、そこから十個ほどの財布がポロポロと出てきた。
その財布は色も素材も違い、統一感のない財布だ。この全部の財布がこの少女の財布だとは考えにくい。
「この財布はなんだ?」
ブラッドが聞くと少女はニヤリと笑う。
「落ちてたのを拾った。…………それでこれで足りるのか?」
ブラッドは少女を睨む。
「足りる足りないの問題じゃない。……拾っただと? これだけの財布をか?」
ブラッドが怒ると少女はやれやれという顔をした。
「そんな怖い顔をするんじゃねぇよ。俺はそいつが欲しいだけ。あんたらには金は払う。それで良いだろ」
「その金は正当なものじゃねぇだろ」
この少女は拾ったと言っている。しかし、どう考えても盗んだものだ。
ブラッドは賞金稼ぎをやっていたことはある。荒っぽい仕事ではあるが、犯罪者を捕まえていた立場だ。
こんな汚い金を受け取るわけにはいかない。
少女はしゃがむと財布を拾う。
「はいはい、そうかいそうかい。受けたらねぇか……」
そして財布を拾うとズボンの中にしまった。
そしてその後、
「なら、こいつは貰ってくぜ」
気がつくとブラッドが手に持っていた船のチケットがない。
「っ!?」
そしてその二人分のチケットをその少女が持っていた。
「いつの間に……」
ブラッドは取り返そうと少女を捕まえようとするが、少女は素早くてなかなか捕まらない。
「ほらほら、こっちだよ〜、こっちこっち〜」
少女はブラッドから逃げながら煽り出す。
「おしりぺんぺん、捕まえられるなら捕まえてごらん!!」
そして少女は自分のお尻を叩くとそのままチケットを持って村の路地へと消えていく。
「あのやろ〜!!」
チケットくらいなら買うことはできる。無理して取り返しに行く必要はない。だが、ここまで馬鹿にされて、我慢することはできない。
「フェア、お前はそこで待っててくれ」
馬車の中で休んでいたフェアに、その場で待っていることを任せると、ブラッドはさっきの赤毛の少女を追うために走り出した。
さっき少女が消えた路地に入ると、少女はブラッドのことを待っていた。
「ほらほら〜、こっちだよ〜っだ!!」
少女はベロを出してそう言った後、また走って逃げていく。
「待て!!」
ブラッドもその少女のことを追いかける。だが、全力で逃げている感じじゃない。なんだか誘導されている感じだ?




