第37話 【BLACK EDGE 其の37 再開】
BLACK EDGE
著者:pirafu doria
作画:pirafu doria
第37話
【BLACK EDGE 其の37 再開】
それは私が買い物に行った時のことであった。
私は出会ってしまったのだ……。あの男と……。
私は小さな頃に拾われた。それは丘にある小さな家であり、そこには二人の兄がいた。その二人も孤児であり、そこに住む男に拾われた子供達であった。
そこの子供達と私は仲良く。兄弟として育ってきた。しかし、ある時、お父さんが私と一人の兄を連れて王都の貴族の家に来た。
しばらく経って、私とその兄はそこの養子になることになった。
そしてそれから数年後。今度は私達は王の養子になることになった。最初からこの予定だったらしいが、孤児を王の子供にするわけにもいかず、貴族を経由して貴族の子供とし、それから王族になったのだ。
すべては大人達の行い。私達は訳もわからず、ただそれに従うようにしていた。
だが、不思議だったのは……。
どこに行っても私達は不自由なく暮らせたことである。今も一度親になってくれた貴族との交流はあるし、最初に拾ってくれた男も遊びに来る。
王である今のお父様も可愛がってくれている。
だが、一つだけ疑問がある。それはもう一人いたはずの兄に会っていない。
「リナ……」
「お兄様」
今いるのは一緒に連れてこられた兄だけだ。もう一人の兄は行方がわからない。
今、お兄様はその兄を探すために騎士と共に各地をまわっている。しかし、それでもその兄は見つからなかった。
私は今、お父様の許しを得て一人暮らしをさせてもらっている。王女であることを伏せて、村の近くの一軒家で暮らしている。
私は世間的には王都にいることになっている。全てはお父様が用意してくれた。
近くの村に買い物に行くと、私は見てしまった。
「あれは……お、お兄ちゃん……」
そしてそこで見てしまった。しばらく会えていなかった兄だ。だが、その人物がこちらを向くと、私は走って逃げてしまった。
なぜ会いたかったはずなのに逃げてしまったのだろう。言いたいことも話したいこともあった。
それなのになぜか、私は背を向けてしまった。
「…………」
走って逃げた後、振り向くとその人物は追いかけてきていた。だが、私は角に隠れたので見失ってしまったようだった。
少し落ち着いた。今なら話せる。私が彼の元に行こうとした時、
「ブラッド、どうしたの?」
彼の元に少女が現れた。少女と少し話した後、彼はその場から姿を消した。
だが、私には追いかける勇気がなかった。




