第234話 【BLACK EDGE 其の234 始まりの村と出会い】
BLACK EDGE
著者:pirafu doria
作画:pirafu doria
第234話
【BLACK EDGE 其の234 始まりの村と出会い】
そこはブラッドとフェアが初めて会った村。ミモザ村だ。
グリモワールを追っていたブラッドは、フェアと出会った。フェアはグリモワールに追われており、その時に襲撃してきたシャドーを追い払う。
そして事情を聞いたブラッドはフェアと共に子供達を救うために施設に襲撃に行ったのだ。
そんなブラッドとフェアの出会った村に立ち寄った二人は、宿を借りることにした。
「よぉ、久しぶりだな」
ブラッドは店主に挨拶する。
ここは村にある木造の古い宿だ。ここの店主はスキンヘッドで強面の顔の持ち主だ。
この宿にはわけやりの客が多い、それぞれが自衛の術を持っている。そのためグリモワールなどから狙われる可能性のある二人にとっては、一般人を巻き込むことを考える必要のない場所だ。
ここで騒ぎが起きても関わりたがろうとする人は一人もいない。
そんな宿の部屋を借りて、部屋へと向かうブラッドとフェア。廊下を歩いていると、廊下で一人の少女が倒れていた。
水色髪の長髪に腰には立派な剣をぶら下げている。年齢はフェアと同じくらいであり、この顔には見覚えがある。
「お前は確か、キースの娘の…………」
「スカイ?」
スカイは名前を呼ばれて顔を上げる。そしてブラッドとフェアを見つけた。
「あ、あなた達は確か、雪山の…………」
ブラッドはスカイを抱き上げて座らせる。
「何があったんだ…………」
「腹が減って……………」
「はぁ?」
村にあるレストランで三人は食事をしていた。スカイは一人で五人分の食事を食べている。
「それで腹を空かせて倒れていたと…………」
諸々の事情を聞いたブラッドは呆れる。
父であるキースと共に賞金稼ぎとして旅をしていたスカイであったが、乗る馬車を間違えてはぐれてしまったらしい。
それで急いで合流しようとはぐれた村に戻ったりしたが、キースと合流することができなかった。
そのため一人で故郷を目指していたのだが、金が尽きて力尽きていたらしい。
賞金首を捕まえてもギルド会員でないため賞金を貰うこともできず、父から貰った剣だけでどうにか暮らしてきたらしい。
「っで、馬車を間違えたのはどっちなんだ?」
「父です」
ブラッドは頭を抱える。
「はぁ〜、あいつは何やってんだ…………」
キースはブラッドやヒューグに比べると几帳面で生真面目な性格だ。だが、たまにネジが外れていることがある。
賞金首と間違えてブラッドを拘束したことや、自分の武器と間違えてヒューグの大剣を持ち帰ろうとした時もあった。
「それで故郷はどこなんだ?」
ブラッドはそう言いながら財布を取り出す。
キースの娘だ。このまま放置しておくわけにもいかない。せめて帰れる程度の金は貸そう。
金は父親から返してもらう。
スカイは答える。
「マルグリットです」
それを聞いたフェアは嬉しそうに
「本当ですか。今私たちもそこを目指してるんです」
ブラッドはビクッと身体を震わせる。嫌な予感がする。
金を貸す程度ならやってあげる。だが、相手はキースの娘だ。
流石にスカイは大丈夫だと思うが、あのキースの娘だ。
一緒にマルグリットに向けて旅なんてしたら何が起こるか分からない。
さっきのキースの間違えは可愛いものだ。思い出したくないような嫌な思い出もある。
それにスカイと一緒にいたなんてキースに知られたら、どうなるのか。
「え、フェアちゃん、マルグリットを目指してるの?」
「うん、一緒に行こ!」
「良いんですか? ブラッドさん?」
ブラッドは笑顔を作る。
「あ、ああ、大丈夫だ」
おい、キース! どこにいるんだよ!!




