第230話 【BLACK EDGE 其の230 新たな約束】
BLACK EDGE
著者:pirafu doria
作画:pirafu doria
第230話
【BLACK EDGE 其の230 新たな約束】
アルファが提示してきたのは、グリモワールからも子供達の支援をさせてほしいというものだった。
白龍の適応者として確保されていた子供達。今から新しい親を探すのも、自立するのも簡単なことではない。
そのため、それを手助けさせてほしいということだった。
グリモワールからの資金援助と土地の提供。それで子供達に新たな親が見つかるか、または自立するまでの援助をする。
そしてその約束通り、数日も経たないうちにカメリアの土地の提供と大量の資金が送られてきた。
ブラッドも赤崎の賞金が渡され、それを子供達に渡した。メテオラにも連絡して、メテオラの騎士からも護衛をつけてくれることになった。
約一週間程度、ブラッドは子供達と過ごし、平和な日々を送った。
そして、
「…………そろそろ行こうと思う」
ブラッドは子供達とフェアにそう告げた。
ブラッドの旅の目的はグリモワールだ。奴らを倒し恨みを晴らすこと。
そして今回の戦いで、全ての元凶と思われる人物とも出会った。
だからこそ、ブラッドは旅を続けなければならなかった。
子供達は泣いたり、怒ったり、たった一週間であったが、その間にできた絆は大きい。
そしてブラッドはフェアの方を向くと、
「フェア、今までありがとな」
フェアとは子供達を救うという目的で旅をしてきた。魔女に会ったり、王都へ行ったり、雪山にも行った。
「ブラッド、私も…………」
フェアがそこまで言いかけたところでブラッドは首を振った。
「お前は残れ。ここから先は俺の旅だ。お前の目的はここで終わった」
フェアの目的は子供達を救うこと。これ以上ブラッドの危ない旅に付き合う必要はないのだ。
さらにブラッドは続ける。
「それにお前がいた方がこいつらも安心だろ」
ここで一緒にいて分かったのは、フェアは子供達に慕われているということだ。
だからこそ、施設を抜け出す時、フェアに任せたんだ。フェアなら任せられると思ったから。
それだけフェアは子供達に頼りにされている。
そんなフェアをブラッドが連れていくわけにはいかない。
「そういうわけだ」
フェアは何も言わずに、ただ頷いた。
そんな会話を終えたあと、子供の一人がブラッドに聞く。
「ねぇ、いつ行くの?」
「そうだな。明日の早朝には出発する」
それを聞いた子供達は文句を言う。だが、もう決めたことだ。
そして出発前の日の夜。ブラッドは馬車に荷物を詰め込んだ。
荷物運びをフェアと数人の子供達が手伝ってくれたが、荷物運び中フェアは一度も話しかけてこようとしなかった。
ブラッドが話しかけても適当に返事をされるだけだ。
そんな感じで、夜が明けてブラッドは出発の時になった。
メテオラの騎士や子供達は出迎えてくれるが、なぜかフェアは現れない。
ブラッドが子供達に聞いても、ナイショと言われて教えてくれなかった。
今まで一緒に旅をしてきた仲間だ。だからこそ別れるのが辛いのはわかる。だが、見送ってくれないのは少し寂しい。
それでもここに残るわけにもいかないため、ブラッドは馬車に乗り込むと馬車を動かした。
子供達は手を振り、騎士達も見送ってくれる。たまに戻ってきて、フェア達がどうしているのか、観に来るのもいいだろう。
ブラッドの馬車がカメリアを出て、東に進んでいると、馬車の奥から物音が聞こえた。
それは子供達が馬車に乗せた木箱だ。その中から何かがガタガタと動いている。
それに気づいたブラッドは、何者かが侵入しているのかと馬車の中を警戒する。
「誰だ!!」
ブラッドがそう叫び、馬車の中を覗いた時、その木箱が倒れた。
そしてその倒れた木箱の中から、金髪の少女が転げ出てきた。
「痛てて…………」
「フェア!? なんでお前が!?」
ブラッドがフェアが現れたことに驚く。
フェアはカメリアにいるはずだった。
子供達のためにカメリアに残ったと思っていた。そんなフェアが馬車に乗っていた。
ブラッドは馬車を止める。
「なんでお前が…………」
ブラッドがもう一度言うと、フェアは腰に手を当てて怒る。
「同じことを二回言わなくていい!」
ブラッドは理解できずに頭を掻いて困る。そんなブラッドを見てフェアは断言する。
「私はブラッドについていく」
「子供達はどうするんだ」
「子供達、みんなが私が提案してくれたの。みんなが私に勇気をくれた」
それで理解した。この木箱は子供達が早朝に新しく入れていた木箱だ。そしてその中にフェアが入っていた。
そして子供達も、メテオラの騎士達もフェアがいると分かって見送ってくれたのだ。
「でも、お前の目的は…………」
「目的なんていらない!!」
フェアは力強く言う。そして、
「だって私はあなたの仲間だもの。ついていくことに、一緒に旅することに理由なんていらない!」




