第189話 【BLACK EDGE 其の189 美しき鳥】
BLACK EDGE
著者:pirafu doria
作画:pirafu doria
第189話
【BLACK EDGE 其の189 美しき鳥】
「あなたはブルーバードの総督スワンですね」
ロジョンは殴り飛ばされた後、ゆっくりと立ち上がりながらスワンの方を見た。
「あら、私の名前を知ってるなんて、光栄よ」
スワンは丸太のように太い腕を曲げると、自分のほっぺたを優しく撫でる。
そして頬を赤くした。
名前を呼んでもらえたのが嬉しかったのだろう。
ロジョンは服についた埃を叩いて落とすと、落とした箒を拾った。
「赤崎博士は慎重なお方です。敵の情報は全て網羅しております」
ロジョンは箒を持ったまま深く頭を下げた。
スワンは腕を組むと、フェア達の方を向かずに伝える。
「約束よ。あなた達を守り抜く。そのために私が戦うわ。そこで待ってなさい」
そしてスワンは腕を組んだまま、一歩前に出た。そして穴が空いた壁のところを真っ直ぐ立つ。これでロジョンはスワンをどうにかしなければ、フェアに触れることもできない。
「あなた方が協力することも赤崎博士の計算のうちです。そしてあなたがここで離脱することも…………」
ロジョンの台詞を聞いたスワンは眉間に皺を寄せる。
「言ってくれるわね。ここで私が離脱だなんて…………傲慢よ」
「事実です」
「傲慢よ」
ロジョンは箒を両手に持ち、スワンに近づく。
そしてロジョンは箒の棒の部分でスワンの顔を殴った。
ロジョンは箒を振る速度は素早く、まるで剣をするようなスピードだった。
そしてその威力は岩石ですら破壊してしまいそうな破壊力。しかし、そんな攻撃を顔面に受けたというのに、スワンはピクリとも動かなかった。
「ほら、傲慢よ……」
スワンは腕を組んだ状態で動くことはない。ないはずなのだが……フェア達はスワンの後ろ姿を見て、不思議な感覚に陥った。
スワンの背中がまるでむき出しになった大地の壁のように巨大で、そして人の力では敵わない大自然の一部のように感じた。
攻撃を受けたスワンの身体に異変が起きる。スワンは何もしていないというのに、スワンの身体が白い湯気が漏れ出している。
「……あなた、私の情報も網羅してるって言っていたわね。……じゃあ、私の術も知っていて当然よね」
スワンの肉体は膨らみ出す。元々大きかった筋肉がさらに一段階大きくなった。
「…………私の術は受けたダメージを自分の力に変換する。……今の一撃で倒せなかったのはあなたの上司の計算ミス……そして今、あなたの敗北は確定した」