ここから見えるもの
ここから見えるもの
光る液晶と、曇った天気
吠える犬と、逆さま蛍光灯
居ない君は、シャンプーの香りだけを残して
黄色いヒヨコは、ぷかぷかと浮かぶだけ
一昨日の匂いをさせながら、彼は髭を抜いて
いててと口から白煙を漏らし、むせかえって髭を散らす
通りでカラフルなこども傘の列が、賑やか
くらやみのなかで、くらやみに気付けない
最初の感情をとっくにおぼえていない
反芻する遠い記憶は、誰が為にあるのですか
猫が欠伸をしているだけの世界なら、ほんとうに幸せですか
虚空に投げた問いかけは、紫煙となって立ち消えて
捉えようのない悲しみが、やがて雨となってコンクリートを濡らした
いっさいがっさいをなくしてしまっても欲しいものなんて、ここにはないわ
得意気な顔で言い切ってしまう
大げさな寝坊で恥じらいながら、やってくる空虚なんてもう待ってられない
ここにないなら、そちらへ
そちらにないなら、またここへ
わたしが、ここから見えるもの
だれかのせいかつと、曇った天気
気まぐれな疑問と、ちっぽけなじぶん