54.ラムネ
- ラムネ -
夏の暑い日差しの中を
黒いスーツを着て歩いていると
今はもう珍しい駄菓子屋を見つけた
コンビニで駄菓子が売られるようになってから
駄菓子屋と言うものを見なくなって
心の中で少し寂しさを覚えていた
駄菓子屋の前では、
今も稼働しているゲーム筐体機や
10円玉をはじいて遊べるゲーム機が置いてあった
「懐かしいな」
気が付けば足が其方へと向かい
歩きながら首に巻いていたネクタイを取り
第一ボタンを外して店内に入る
「いらしゃい」
おばあちゃんの声が店内から聞こえ
懐かしい駄菓子やおもちゃを見て
童心に帰った気持ちになった
店の奥へと向かうと
ジュースが入った冷蔵庫に目が行き
そのままラムネを1本だけ取り出した
「ばあちゃん、これをくれ」
そう言って、ばあちゃんにお金を払い
暑い夏の日差しが射す外へと出て
店の近くにあるベンチに座った
ガラス玉が蓋をするラムネを見て
懐かしい気持ちになりながら
一気に蓋を開ける
シュワシュワと言う音を聞きながら
童心に返ったように喉を鳴らし
一気にラムネを飲む
夏の日差しと相まって
喉に伝わる炭酸の爽快感に
つい頬が緩んでしまう
「あぁ、夏って感じだわ」
飲み終えてしまったら空のラムネの瓶を見て
ラムネの中の瓶を見つめるながら
ラムネをもう一本買うかなとほほ笑む