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50.鬼灯色の桜
- 鬼灯色の桜 -
あの世とこの世の狭間で
あかね色に染まる空を見つめながら
私はずっと誰かを待ち続ける
目の前に広がる石畳の街道には
鮮やかな朱い色の鬼灯と
赤く色ずく曼珠沙華が咲き乱れる
千本以上はある朱い鳥居
足元を照らす灯篭
鬼灯色の花を咲かす桜の樹
幾年もの間、枯れることは一度もなく
私と同じように、誰かを待っているか
鬼灯色の桜は、永遠に咲き続ける
風が吹く度に、花びらが散り
花びらが地面に触れると
光の粒子となって消える
「お前の待ち人は、いつ来るのだろうな」
誰かが来るわけでもなく
誰を待っているのかも分からず
私はジッとこの場所で待っている
あの世とこの世を繋ぐ狭間
そこに咲く桜の前で
私は空を見上げながら待ち続ける