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18.二人
引っ越しの為に
私は部屋を片付けていると
ふと、本棚に目がいく
茶色い表紙の
一冊のアルバムを手に取り
私はそのまま開いた
沢山の写真の中に
私と貴方が初めて出会った
藤の花が咲く公園の写真があった
帽子が飛んで行った時に
貴方が拾ってくれてから
付き合いだしたんだっけ
「ん、どうしたんだい」
背後から貴方の声が聞こえる
あの日と変わらない
優しくて温かな声
「もう、あれから十年が経ったんだね」
「そうだね。もう、十年も経つのか」
恥ずかしそうに言う貴方に
私は頬をかきながら
貴方の方へと顔を向ける
貴方の左薬指に
私と同じ指輪をつけて
頬を赤く染めながら言う
「ねぇ、彩。その、僕と結婚して幸せ、かな」
そう言えば
今日は結婚記念日だったね
そんなことを思いながら
私は言う
「私は幸せだよ。沙月君」