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14.あの人と会えますように
一年に一度だけ
この川の向こうにいる
彼らは出会える
この日の夜だけは
君の隙だった小説を片手に縁側に座り
君との想い出を思い出す
病院で寝込む君を連れて
笹が飾られている場所へ
車椅子を押して向かう
「ねぇ、君はどんな願い事を書くの」
優しく問いかけるように
君は微笑みながら
私に赤い短冊を渡す
「そうだな。ずっと、君といられるように、かな」
君の問いかけに答えると
嬉しそうに笑いながら
「そうだね」と答え、
同じ赤い短冊に願いを書く
そして、翌年の七夕の日に
君は旅だった
今日もまたこの日が来る
君との想い出を思い出しながら
小説を開く
君が最後に書いた短冊を栞にして
君の願い事を忘れないように
毎年、この日に君の短冊を見る
「来年も、あの人と会えますように」