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13.桜並木
桜の花びらが散る中で
カメラを片手に持ち
隣を歩く小さな少女の手を握り
この桜並木を歩き出す
君との約束だったよね
僕たちの娘の入学式
「一緒に行きたかった」と
涙を流しながら言っていたよね
僕はスーツを着て
少女は赤いランドセルを背負って
君が幼い頃に通っていた
あの学校へと向かって歩く
「パパ。天国でママも見てくれてるかな」
純粋なその瞳で
僕を見つめながら言う
もっと、君に甘えたかったはずなのに
君はもうこの世にいない
「そうだね。きっと、ママも彩のランドセル姿を見て喜んでると思うよ」
僕の返事を聞いて
嬉しそうにうなずく、彩の笑顔に
君の笑顔が重なった
あぁ、君はそっちで観ているだろうか
君との初めて出会った
この思い出の場所を
今度は彩と共に
桜の花びらが散る中を
僕たち二人は歩き出す