アベンジャー
一週間たって来るって言ったくせに、清春は次の日にはもうノコノコやって来た。約束の日まであと三日もある。わざとらしく、まだ包帯なんか巻いてやがる。
「ニイちゃん、金できたや?」
「一週間じゃなかったのか?」
「いや、こっちもゴタゴタしとって金が要るとって。逃げる気やなかろうね。ちゃんと払う気はあると?」
「ねえよ。」
「なんてや? 表沙汰にしていいとや? ナメとったら傷害で訴えるぞ。」
「訴えるもクソも、三針縫っただけだろう、てめぇは。」
「誰が言ったとや!!」
なんだか知らないが、誰から聞いたのかってことにこだわってしつこく聞いてきた。
「誰が言うたやって言いよったい、こら!」
「大変だな、てめぇの組も。中洲の一件でついに荒巻会もドンパチか?」
「キサン、ヤクザに知り合いがおるな!!」
「訴えるんならやってみろ。てめぇも恐喝でぶちこまれるぜ。いや、詐欺罪になるかもしんねぇなあ。清春ちゃん。」
ハッタリだった。法律のことなんかよく知らない。でも、こいつも馬鹿だから効果あったようだ。しばらくじっとこっちを、例のすねたような目つきで睨んでたが、
「そうや。そんならこっちにも考えがあるぜ。」
「なんだよ? 早くしろよ。俺ぁもう帰るぞ。」
「お前にずーっと付きまとっちゃる。どこに行っても、ぼこぼこにクラして(殴って)一生いたぶってやるけんな。」
「なんだと?」
帰りかけたけど、ムカついたので清春のとこに戻った。
「そんなこと言うやつには……こうだ!!」
言いながら、昨日作った爆弾を投げつけた。爆弾っていっても、フジカラーかなんかのフィルムケースを黒く塗ったやつの中に小麦粉を入れて、そこに爆竹を埋め込んで導火線をフタに開けた穴から出したものだ。導火線にはマッチの火薬の粉をロウで溶かしたもんが塗ってあって、それにマッチを擦る紙が巻いてある。で、この紙をくわえて爆弾を引っこ抜くと導火線に火がつく。爆竹が破裂すると周りが白い煙幕張ったみたいになる。ようするに目くらましだが、昔、中学の頃ヤンキーに囲まれたときはこの手で逃げていた。相手がビックリしてる間に一人ぶん殴って活路をみいだす。
清春はそのときのヤンキーみたいに、ビックリして固まった。腹に蹴りを入れたらあっけなくダウンした。よく考えたら、最初のときの仕返しをまだしてなかったので、すっとした。清春はそこに置きっぱなしにして、チャリでとっとと帰った。寮に仕返しに来るかと思ったがその日は来なかった。帰ったら、小麦粉で学生服がまっ白だった。




