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必殺学生人  作者: 神保知己夫
レポート用紙 1冊目
7/42

背景説明の回

 探偵ゴッコは二日でやめた。決定的なことがわかったからだ。もっと続ければいろんなことがわかったかもしれないが、とにかく寒くてやってられない。ホッカイロ三個に、皮のジャンパーの上に毛織りのコートという重装備でも鼻水が止まらない。ヤクザ事務所の近くの公園の黄色い土管の中じゃ電波が入らないから、その上にラジオ載っけて俺はイヤホンを引き込んで中で座って盗聴してたんだけど、なにが寒いといって、まず尻が寒い。土管はコンクリートだからガンガン冷える。下にダンボールを敷いたり、ホッカイロを尻の下に全部敷いたりしたが無駄だった。

 そんなことより、一日目はそんなたいしたことはわからなかったが、例の清春がどういうやつかぐらいは大体見当がついた。あいつはまだ正式の組員じゃない、一番の下っ端で兄貴分の運転手をしてるらしい。で、今は抗争中で、学生がヤンキーをぶん殴ったぐらいのことで兄貴分が出張ってくるような余裕は全然なさそうだった。しかし、おかしなこともあった。抗争でごたごたしてるのはわかるが、あいつを殺せとか仕返ししろなんて話はほとんど出てこなかった。それよりも、葬式がどうこうとかそんな話ばっかりしていた。これは後で調べてわかったんだが、この組は抗争のどっちの味方でもない中立だったんだけど何日か前に組員が別の組員と間違えられて撃たれたらしい。葬式ってのは、その間違えられたヤクザのだろうけど、それに撃ったとこの幹部が出るとか出ないとかで揉めてたみたいで、ヤクザってのはよくわからない。あと、俺がぶっ壊したヤクザの車は、翌日には直ってきてた。ヤクザは車も早く直してもらえて便利らしい。でも、窓は割らなくても針金で引っ掛けてドアを開けるやり方があったらしいけど、そのやり方を知らなかったんだからしょうがない。とにかく、そのおかげで二日目に車の盗聴機から決定的なことがわかった。事務所の方で誰かがどっかに行くことになって、清春君が運転手やるんでついて出ていったから、車の方に周波数を合わせたら二人が乗り込んできてすぐ、

「中村さん、あの話っすけど。」

「青林の学生のアレや?」

「一度ついてきてくれんですか?」

「今そんなヒマあるもんか。だいたいアレやろうが、殴られたっていっても三針縫っただけやろうが、お前は。」

「でも、はがいい(悔しい)やないですか。」

「いいかげんにせんや、キサン。いまのままやったらお前までチャカ(拳銃)もって走り回ることになるかもしれんとぞ。」

 それからは、車が遠くに行ったんで雑音で聞こえなくなった。このあと、まだ七時か八時ぐらいだったけど、バカバカしくなって帰ってしまった。たった三針ぐらいのケガで、おれは自殺するとかなんとかいって悩んでたってことだ。なんか、こっ恥ずかしくなってきて顔が熱くなってきた。腹がたってきた。


 それからちょっと興味が出て、博多埠頭にある市民図書館で調べてみた。行く途中で天神を通ったときに、やっともうすぐクリスマスってことに気付いた。〝ナイトレンジャー〟(ハードロックバンド)を聴きながら自転車をこいでると、別の世界のようだ。つまんないことではしゃいでるなって気がする。ここ数日いろいろあったけど、けっこう楽しかった。やっぱシャレにならないマジなことだったからだろう。それにくらべたら、こんな作り物の祭りで騒ぐのがすごくつまんなく思えてくる。でも、二学期が終わると実家の北九州に帰るから、一週間もしないうちにケリをつけなくちゃならない。

 図書館につくと、三階の資料室に行ってここ二、三ケ月の新聞を持ってきてテーブルに座った。ウォークマンをだしてテープを入れ替える。ハードロックを聴きだしたのはつい最近で友達の影響だ。しかし、歌っているやつらのことはあんまり知らない。曲がかっこいいから聴いてるだけで、むしろ舌をベロッと出してる外人のバンドを見ると、単なるバカにみえる。もともと音楽に決まった趣味はなくて、前に聴いてたのも〝さだまさし〟から映画音楽、クラシック、民族音楽とバラバラだった。別にクラシックだから高尚だとも思わないし、ロッカー気取ってノーガキ垂れるのもアホらしい。どうして音楽やってる奴は他のジャンルを目の仇にするんだろう。ヘビメタがすきな友達がいて、パンクは許せないなんていってるけど、おおきなお世話じゃないか。だいたいおんなじロックなんだし、まぁ、いいか。

 いま抗争してるヤクザの親分は福岡の山野組と、久留米の神龍会。夏あたりに熊本でなんとかっていう組長が殺されたのがきっかけらしいけど、それをなんで博多で抗争してるのかはよくわからない。清春君の荒巻会は山野組の福岡連合のメンバーだが、組長が神龍会の組長の舎弟かなんかで仲がいいという辛い立場だ。ところが、数日前に荒巻組員が山野組員と間違えられて中洲で射殺された。そこで、これまで中立を守ってきた荒巻会の身辺が騒がしくなってきたわけだ。

 帰りは天神のショッパーズ(デパート)のレコード屋に寄った。〝泉谷しげる〟のミュージックテープを買ったけどどんな歌うたってるのかおもしろそうだから買っただけで、だいたいテレビであぶないオヤジの役やってるとこしか印象にないし、歌手やってることもこの時知った。いま持ってる音楽のテープも友達にダビングしてもらったもんだし、いつもならこんな散財はしないんだが、なんだか気が大きくなっていた。散財ってのはほんとで、このテープしばらく封も切らなかった。それから、同じ階のオモチャ屋だか雑貨屋だかで爆竹を買った。ちょっと思いついたことがあったからだ。


参考)http://kasutorizassshi.blog.jp/archives/9947782.html

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