表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必殺学生人  作者: 神保知己夫
レポート用紙 1冊目
6/42

探偵物語Ⅱ

 友達の話だと大人のオモチャ屋で盗聴機が売ってるらしいんだけど、電子パーツ屋に行けばそんな恥ずかしいとこで買うことないので、学校が終わってから天神にあるパーツ屋に行った。でも、一個五万とか六万とか高いのばっかりで、高集音率とか何百メートルで受信できるとか、コンクリート越しでも聞けるとか書いてあるけど、なんだかわからない。かと思ったら、八百円ぐらいで安売りしてたりする。でもこれは、なんかヤバそうなのでとりあえず五千円ぐらいの「ホーマー」だかなんだかってやつを二個買って帰って、さっそく説明書を読んだらFMラジオが要る()って書いてあったので慌てて部屋を漁ってみつけだした。三十六時間しか()たないってあるからアルカリ電池ならちょっとは保つだろうって入れて、書いてあった周波数に合わせたら盗聴機にしゃべった自分の声がラジオから聞こえてきて感動したりして、私服に着替えてから長住のヤクザんとこに行った。

 事務所の近くの公園にチャリを停めて、歩きでまず、昨日ヤンキーが車を停めてた所に行ってみたらやっぱりあった。ガムテープ貼って窓割ったあと、シートの底の縁の部分に両面(りゃんめん)テープで盗聴機をくっ付けた。割んのに使った公園の石は車ん中に残して、物盗りにみえるように車内を引っ掻き回したら、二万出てきた。盗聴機代がういてラッキーだった。それから事務所の前にはりついてる警察に見られないように迂回して裏手にまわり込んだ。人通りがないのを確かめて、事務所の真裏にある家の庭に忍び込んだ。家のやつに気付かれないように塀づたいに庭を横切っていくとつきあたりの塀があって、五十センチぐらいの間をおいて、いきなりヤクザのビルになっていた。目の前に大きな窓があるが、くもりガラスなので中はどうなってるのか分からない。塀は腰までの高さしかないので、身を乗り出して窓のサッシの下のアルミの部分をぐっと横に引っ張ってみたけど開かない。やっぱり鍵が掛かっている。外に盗聴機付けても聞き取りにくいだろうし、待ってたら長期化しそうだけど、しょうがなかった。ここにいれば、ヤクザは馬鹿みたいにでっかい声で喋るから盗聴機は必要ないけど、話を聞いてるとなんか今大変そうだった。抗争中だから当り前だけど、電話がバンバンかかってきて、大きな声で命令したり説明したりしていた。それにしても、すごい寒い。ホッカイロかなんか持ってくるべきだった。

「矢島さん! 車やられました。窓割られとります!」

 こいつはひょっとしてと思って、塀の上に立って透明ガラスになっている窓の上半分から覗くと、飛び込んできたのはやっぱり例のヤンキーだった。

「なんや、狙われたとや?」

「いや、荒らされとるんですよ。金もなくなっとるから、ドロボーって思うんすけど。」

「なんしよるとや。車はお前にまかせとったろうが。」

 なるほど、あのヤンキーは運転手だ。

「警察がしゃーしい(うるさい)けん、こっから離れたとこに置いとったとですよ。それで、警察が爆発物処理を呼ぶって言いよるですけど。」

「はあ?」

「いや、エンジンかけたら爆発するかもしれん言うてですね。」

「なんが、大げさな。」

「いや。前、久留米でそがんことがあったて聞いたことがありますよ。」

 別のヤクザが口をはきんだ。兄貴分みたいな奴はしばらく考えて、

「そしたら、お前が(エンジン)掛けてこい。」

「俺がですか。」

「他に誰が行くとや?」

 他のヤクザもおもしろがって行け行けって言うからヤンキーは渋々出ていった。しかし、ほんとに爆弾が仕掛けてあったりしてあいつが死んだら、こいつらどうするんだろうか。だから、ヤクザはいやだ。

 しばらくしてヤンキーが帰ってきた。なんにもないってわかったら、今度はこの夜中に修理に出しに行かされた。今、開いてないって言ったら、知り合いのとこだから電話しとくって言われ、外車だから部品がないって言ったら、なんの窓でもいいから明日までに付けてもらってこいって言われていた。要するにペーペーのパシリ(使いっ走り)のようだ。しかし、ヤンキーの名前はわかった。清春って呼ばれてた。

 それから、十一時近くまでずっと待っていた。一度、部屋の中に誰もいなくなったとき車みたいに窓を割ってやろうかと思ったが、なんとか思いとどまった。あと、こっちの家のやつが出てきて洗濯物を取りこんだときはヤバかった。俺は向こうからは木の陰になっているが、目を凝らして見られたらわかっただろう。でも、じっと固まって動かなかったんでバレなかった。その後、その家の明かりが消えた。寝たみたいだった。清春も事務所に帰ってきたが、すぐに家に帰ってしまった。

 十一時をまわったころ、

「そしたら、俺もいっぺん帰ります。」

「そうや。そしたら、そこまで送ったい。」

 言いながら、窓に近づいて来た。急にきたから慌てて塀の陰にしがみついた。すると、窓がガラッと開いてバシャッとなんか捨てる音がした。そして、窓を開けたまま戻っていって外に出ていった。そーっと顔を上げて中を見ると誰もいなかった。下を見ると煙草の吸い殻が茶色い水にまみれて捨ててあった。ちくしょー、もっと早く開けろってんだとか思いながら、上の部分だけが見えている灰色のスチール棚の背に盗聴機を両面(りゃんめん)で付けた。用が済んだら、とっととこんなところは出て自転車のところまで戻った。そして、ホット缶コーヒーを買うために、鬼のように自販機をさがした。


参考)https://nx47.com/modules/rssc/single_feed.php?fid=31929421

http://yakuzanews.jp/blog-entry-2192.html

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ