ボニー&クライド
それからどこをどう帰ったのか、気が付くと寮の自分の部屋にいた。
「ねぇ、ホントに土足でいいの?」
俺のいる単身寮は、もと病院かなんかだったそうで、床は赤いリノリューム、ベッドと机はスチール、壁は白、窓にはブラインドといった具合になっている。絨毯を敷いたり、こたつを持ち込んだりして和式の生活をしている者もいるようだが、俺はめんどくさいのでそのままにしている。
「うわぁ、カセットいっぱいある。あ、ヴァン・ヘイレン。〝5150〟って〝ホワィ・キャント・ディス・ビー・ラブ〟が入ってるやつでしょ。今、流行ってるよね。」
そういえば、自転車はどうしたんだろう。自転車屋に預けっぱなしなんだろうか。とにかくここまで来る途中の記憶が無いから、階下の自転車置場まで行かないとわからないな。
「クワタバンドもある。ねえ、この135ってバンドいいの? あっ、これ〝0%麗人〟って曲知ってる。」
そういえばどうしてこの女がここにいるんだ。こんな女ノコノコ自分ん家まで連れてきて、全くどうかしてる。それに、先制攻撃は俺の十八番のはずなのにヤンキーに不意打ち食らうし。そうだ、だから殺さなきゃならなかった。この女のせいで。……それは違うだろう。俺がヤンキーの頭ぶん殴ったんじゃねえか。この手で殺したんだ。
「ねぇ、気にすることないって。インネン付けてきたの、向こうなんだから。なんか言ってきても、シカトすればいいって。」
マジか?この女。殺っちゃったんだぞ、コノヤロウ。あっ、そうか。ヤンキーが死んでないと思ってんだ。そうだなぁ、死んだと決まったわけじゃないかもな。でも、ダメだな。偶然がこっちの都合のいいように働いたためしがない。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/5150_(%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%A0)
https://ja.wikipedia.org/wiki/KUWATA_BAND
https://ja.wikipedia.org/wiki/135_(%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89)