今度はマジで背景説明回
結局その日はおっさんと一緒に寝るハメになった。おっさんのフトンを押し入れから出して俺の布団の横に敷いてるとき、おっさんがゴソゴソしてた。拳銃もって来て、デッカイ封筒の中に岩田屋の包装紙で包んであった。
「ほら、コレ大事になおしとき(しまっておきなさい)。大きかろう? 三十八口径やけんね。本格派たい。あん人たちが本当にタマとるときに持っていくヤツやけんね。」
でっかいリボルバーのやつで、銃身が短くて重かった。武器なんか預かったことないんじゃなかったのか。このウソつき野郎。
「こういうの高いんでしょ。」
「なんて?」
「いいですよ。なんか悪いですよ。」
「いいって。持っときって。そんかわり、こん事はあん人たちには黙っときよ。この商売はいつ何が起きるかわからんのやけん。実際、荒巻の若いもんが撃たれたのだってチャカ持っとったら、命のあったかもしれん。なかったかもしれんばってんが、ただ殺されるだけっちゅうことはなかったかもしれん。」
その話をもっと詳しく聞きたいんだよ。
「それに働きのよかったらすぐ盃のもらえるかもしれんよ。誰が親になるかで、この世界もずいぶん違うけんねぇ。」
そのあとおっさんがパジャマ持ってきて「着れ」って言ったり、「あんた本、読むごたやんね。スタンド持ってきてやろうか?」とか。だからそういうのやめてくれってんだよな。
おっさんと並んで寝ながら、蛍光灯の常夜灯を見ていた。部屋の中が薄暗いオレンジ色で、すごい静かで時計の音がカッチカッチきこえたりして、こういうシチュエーションはホント他人の家にいるって感じがする。嫌いだ。
「あの……」
「なんね?」
「起きてますか。」
「寝られんとね。」
「いえ、あの今日来た人たちのことですけど。」
「熊本の人。」
「エラい人ですか?」
「二人とも山本一家のカナメやけんね。」
「なんか大変そうでしたけど。」
「つらい立場やもんね。もともと戦争の火元やのに久留米の働きの方ばっかりが目立っとるけん。言ってしまえば、あの二人とも神龍の幹部たい。幹部のトップたい。そのトップが現場に出て若いもんと飛び回っとるのに、なかなかツイとらんでねぇ。」
「ああ、警察のゴーモンとか、荒巻会とか言ってた。」
荒巻会のことを教えてくれ。
「富士田さんって、おったやろ。この前あの人んとこのモンが熊本の病院で弾いたとばってん、人違いやらかしてね。それがカタギの人間やったもんやけん、警察にも新聞にも外道のごと言われたあげくに仲間うちからもオッチョコチョイって笑われて、それで弾いた二人とも懲役食ろうて、ホント気の毒な話たい。あの人も、そん時指令出しとるけん自分も懲役に行くつもりやもんね。けど、そのカタギていうても、相手のベッドに居って、ヤクザモンのごたカッコしとったらしかもん。誰でも間違うくさ(間違うさ)。でもそがん言いわけ絶対しに行かんもんね、あの人は。人間の古かとかもしれんけど、私もおんなじ世代やけん気持ちのわかるとばってん。」
おっさんは最初かったるそうだったけど、だんだんノッてきたらしかった。でも訊きたいのはそっちの話じゃないんだって。
「あのやせた人の方は?」
「ああ、三村さんね。あの人も気の毒たい。二週間ぐらい前に荒巻会の山田のモンが中洲で撃たれたろうもん。あれはウチがやったごとなっとるけど、逆やもんね。実はあん日、三村さんが山田の若いもんと一緒におったとたい。さっき言ったみたいにあの人もつらかもんやけん、自分の殺されるかもしらんのに福岡に入って、ずっと前から飛び回っとったとたい。敵のど真ん中にたい。荒巻の会長とウチの会長とは仲の良かけん、山田の若いモンが偵察の役を買って出たとたい。それをどっかで山野のほうに嗅ぎ付けられて、自分たちもそろそろヤバかって思いよったかもしれんばってん、九州のヤクザやもんね。私が防弾ば着て行けって言っても「よかよか」って言って行ったら、ああなったとたい。それでその後、今度は荒巻の原口のもんが頭カチ割られたやろ。それであん人もヘンに腹探られるし、荒巻の方でも「なんか!」ってゆうことになっとるらしか。でもあの人もああやこうや言いわけするほうやないもんね。仕返しをせんことには泣きつきに行っとるヒマやらないって、まだ現場飛び回っとるんよ。でも知らんモンの多かことやけんね。仕返ししても誰にも知ってもらわれんことやんね。あの人も自分からはゼッタイ言わんやろうしね。あの人も古かタイプの九州のヤクザたい。」
荒巻の、山田の、原口のと出てきて混乱したけど、あとで調べたら荒巻会ってのは清春のいた事務所よりもっとデカい団体で(よく考えたら当り前だな)、清春のいた事務所はその中の一つの組の原口組か、その下のもっと小さい団体ってことらしい。




