表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必殺学生人  作者: 神保知己夫
レポート用紙 2冊目
15/42

1次面接突破

 おっさん()は親不孝通りの近くにあったので中洲から天神まで、けっこう歩いた。なんかタクシー会社で、そこにいた奴に挨拶とかされてたから本当にヤクザじゃなかったってことになる。車庫の横にある階段を上ってって二階に案内された。普通の家みたいだったからここがおっさんの実家なのかもしれないけど、家族はいなかった。

「ビール飲むね?」

「いえ。」

「わたしも大変たい。家族みんな女房の実家の方にやっとるけんが、ほんなごつ単身赴任みたいなもんたい。たしかにいま兼孝組(博多区、神龍会系)の顧問やっとって、いろいろ世話やら焼きよるけど本業はタクシー会社の社長やんね。昔はいくらドンパチやっとってもカタギには何の迷惑も掛からんやったばってんが、最近は〝親交者、親交者〟ゆうて警察のしゃーしかけんねぇ。拳銃ば隠し持っとらんか言うて私の家もガサ入れがあったとよ。だいたい警察も〝シンコーシャ〟なんち言葉新しゅう作ってまでやっきになっとうとたい。けど、博徒(ばくと)っちゅうのはぜったいにカタギに迷惑のかかることはせんけんね、武器やら預かったこたぁ一回もなかよ。」

 ベラベラ喋りながらおっさんは自分でインスタントコーヒーをつくって持ってきた。別におっさんが買ったわけじゃないんだろうけど、少女マンガのバックに描いてありそうな模様のカップが全然似あってなかった。

「そんで、ヤクザになりたいてどうゆうことね?」

「神龍会の役に立ちたいんです。」

「なんでウチにそげん肩入れすると?」

「警察のやり方が気に入らないからです。なんか神龍会ばっかり攻撃して、両方やんならわかりますけど、本当は山野組と裏で手を結んでるんじゃないですか?」

「そげんことはなかよ。県警に山本っていう警視がおって、こいつのアダ名がタヌキたい。そいでこのタヌキがウチの会長ば、えろう毛嫌いしとってそれで目の仇にしとっとたい。そいで、なんね、兄ちゃんは仕事はなんしよっと?」

「青林の学生です。」

「大学の?」

「高校です。」

「そらダメたい。悪いこた言わんけん、バカなことせん方がよか。ちゃんと学校出てまともな職についた方がよか。」

 そんなことはわかってるよ、バカ。

「今思いついたわけじゃないです。自分なりにずっと考えてきた結果です。」

「なん考えよったとね?」

「まじめにやっていくのが合ってないんです。だれも俺みたいなもの相手にしてくれないんです。だから命張ってでも、自分と本気でつきあってくれる方がいいと思って。」

「そうね。で、親はこのこと何て言いよるね?」

 折れてきたぜ、バカな奴だ。

「親のこと気にしてたら極道(ごくどう)になんかなれないんじゃないですか?」

「おお、そらそうたい。わかっとるやないね。そこらの極道よりもわかっとうね。」

「覚悟はできてます。ここで放り出されたらもう生きてくとこがありません。」

 おっさんは下を向いて、また長い間があった。

「そいじゃ、一応神龍会の人と会うことになっとうけん、話だけでも聞いてもらうや?」

「よろしくそれでお願いします。」

 ちょろいな。仁義(じんぎ)とか何とか言ってる連中にはこれが一番だとおもったら、その通りだったな。

「けど夜しか会われんよ。それでもよかね?」

「はい。」

「こんな時やけん、昼間やらホイホイあの人らも出歩けんたい。それまでここでゆっくりしとけばよか。今、十二時やけん半日あるけど、どげんするね? 私は今から仕事があるけん、夕方まで相手はでけんけんが。ここにおる?」

「はい。」

 よくしゃべるおっさんでそれから十分ぐらいしゃべって、俺もテキトウな相づちをうってたらどっかに行った。一人の間、ウォークマンを聴きながらポケットに入れてた〝最新宇宙物理〟を読んだ。


参考)https://www.asahi.com/articles/photo/AS20190505001083.html

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ