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必殺学生人  作者: 神保知己夫
レポート用紙 1冊目
12/42

どうせあの世も地獄と決めた

 その日は手持ちに五千円くらいあったので、博多駅の近くのカプセルホテルに泊まった。なんだか寮には戻りたくなかった。そして次の日からは昼は図書館に通ってる。それから余った金で本を買ってきた。太宰治の〝人間失格〟、〝最新物理学入門〟、A・トフラーの〝第三の波〟。それを読みながら、自分のやったことを考えてみた。このとき、中村を殺すのになんの必然性もなかったことに気付いた。そして、いろんなことを考えてるうちに朝方に寝た。次の日も銀行から金をおろしてきてカプセルホテルに泊まった。そして考えを整理するためにレポート用紙を買ってきて、これを書き始めた。書いてるときに、そのときのことがリアルに甦ってすごく感情移入したりしたが、考えがまとまったりなんかは全然なかった。ただ、わかったことは神が実際にいるとしても俺にその存在を示すことがない限り、それをどう規定するかは俺次第だということだ。そして、それとは無関係なところで、俺がヤクザ二人を殺したという因果関係があり、これが唯一確定された事だ。世の中にあるのはその因果の相互作用によるダイナミズムだけで、強いていえば、ここに神の意思が現れるとみていいだろう。ただそれは、みて構わないというだけのことで、真理とはなんの関わりもない。俺はその因果の玉を突くことによって、ビリヤード台の上に神の真意を現出させることに決めた。もうすぐ俺はみっつめの玉を突く。

 すこしばかばかしくなってきた。要するに人殺しがおもしろくなってきたってことだ。なんで中村を殺さなきゃならなかったのかわかった。必要なんかなかった。誰でもいいから殺す口実を探してただけのことだ。最初に清春を殺したと思い込んだときから、じつは味をしめてたんだ。ただし、これは罪の意識なしには成立しない楽しみだから始めから破滅は条件づけられている。永久に救われないというのはこういうことだった。俺は理由もなく人を殺した。そのおかげで殺人の快楽をもっともピュアに享受した。その快楽を失わないためには、永遠に人を殺し続けなくてはならない。そのときに歯止めとなる倫理(良心)は殺人の快楽に気付いた時点で破壊されている。これは高価につくが、ぜいたくな遊びだ。地平線はすでに越えた。戻れないユートピアを惜しむつもりはない。俺は信じる者を裏切り、他人の望みを踏みにじった。それによって快楽という報酬を得、破滅という代金を支払う。ただし、それは納得ずくの取引だ。ユダにだって報酬の金を投げ捨て、自ら命を断ったとしてもなにがしか得るところがあったのである。


 三日もこんなとこにとじこもってると、煮詰まって理屈っぽくなる。実際はこんなマジなことを考えてるわけじゃない。ノッて書き飛ばしたような気もする。それに、明らかにいま読んでる本の影響を受けている。

 ときどき寮に帰ってここにいろんなものを持ち込んでいる。人に見られないように裏口から入るけど、俺の部屋に誰かが入ったような形跡はまだない。警察がまだ来ないのはわかるけど、学校はもう冬休みに入ったかもしれないけど、結構休んでるわけだからどうなってるんだろう。まあいいけど。もってきたのはウォークマンにラジカセに、聖書。学校の宗教の授業のときにはイヤだったけど、読んでみるとなかなかいいことが書いてある。というようなガラクタをデッカいバッグに入れて、昼は肩に掛けてウロウロしたり、コインロッカーに入れてウロウロしてる。あと、カセット。泉谷しげるは聴いてみたらすごくよくて、ハマッてしまった。一番気に入ったのは「褐色のセールスマン」って歌で、イントロはパーカッションから始まって、ヒステリックなベースが続いて、ギターにつなぐ。これもヒステリックだ。そのあと歌に入る。


《ここに「褐色のセールスマン」の歌詞を数行にわたって引用しているが、大人の事情で削除済み》


 つまんないから、やめた。


参考)

https://kotobank.jp/word/%E7%AC%AC%E4%B8%89%E3%81%AE%E6%B3%A2-156015

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E9%96%93%E5%A4%B1%E6%A0%BC

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%86%E3%81%AE%E3%83%A6%E3%83%80

https://music.oricon.co.jp/php/lyrics/LyricsDisp.php?music=189788

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