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必殺学生人  作者: 神保知己夫
レポート用紙 1冊目
10/42

1人目(蒲池清春)

 清春は次の日も待ち伏せしてた。今日も爆弾は持ってたけど、タイマンで勝負をつけてやろうと思っていた。二人とも人目があるとこはヤバいとわかってるので、なんにも言わなくても路地のほうに入っていった。

「まだなんか用があんのか?」

 言ったとき、清春がいきなり拳銃を出した。反射的に清春の顔面を殴った。またKOだった。清春がぶっ倒れると拳銃を持った手を普通なら蹴飛ばすんだろうが、慌ててたんで上からふんづけた。ボキッという音がしたが、清春は無反応だった。完全にノビてるらしい。ただ今回は出血はなかった。思わず、カッときて、

「てめぇ、またかよ!」

 とか言いながら蹴りまくった。

 帰る途中、なんで清春が拳銃持ってたのかを考えた。いくら抗争中でも、正式の組員でもないチンピラが鉄砲もってるだろうか。しかしあいつがノビたまんまで人にみつかって、あの銃が本物ならブタ箱行きだな。でもひょっとしたらモデルガンだったのかもしれない。まてよ、中村とかいう兄貴分がチャカ持ってどうとか言ってたな。もし、あいつが鉄砲玉かなんかに志願してたら。でも俺んとこに来たってことは、俺殺すために鉄砲玉になったとか。そこまで憎まれてたのか? おいおい、だったらあいつが警察に捕まったら俺もヤバいんじゃないのか。

 引き返して戻ったら、人がいっぱい集まっていた。パトカーが三台ぐらい停まってて、路地の奥で警官が腕を組んでなにか話しあっていた。ときどき笑ったりもしている。状況がわからないので隣にいたヤジ馬に訊いた。

「なんかあったんですか?」

「ヤクザがやられたらしかよ。」

「死んだんですか?」

「いやー、さっき救急車が運んでいったけど、意識のなかったって言いよったからねぇ。」

 こうなると神の審判を待つしかない。こないだのこともあるし、今の状況じゃこの先どうなるとも言えない。もし、死んでれば夕刊なり、六時のニュースなりで出るだろう。

 帰る途中のことは、今度ははっきり覚えている。今回、みょうに冷静だったからだ。別に取り乱すでもなく、交通法規もちゃんと守って自転車こいで帰って来た。頭ん中はクリアーでまっ白だったけど、なにも考えてなかったわけじゃなくて神について考えていた。俺は異常に運が悪いから、たぶん清春が一命を取りとめてよかったねってことにはならないだろう。もし、万一そうなっても今度は本物のヤクザが出てきてとんでもないことになるだろう。どうせ清春を殺しちゃうんなら、どうして最初のときに死んじゃわなかったんだろう? 死んでないとしても同じことだ。この二回のプロセスには何か意味があるんだろうか? 神ってものがいるとして、なんのために俺にこんなことをさせたんだろうか。受難の苦悩を増すためか? なんのために。それとも一回目のやつは神が与えた引き返すチャンスだったのか? じゃ俺はその好意を無視したわけだ。しかし避けられたか? 清春のいうことをきいて金払えばよかったのか。一回でやめたか?あいつは。ずっとゆすられっぱなしになってたんじゃないか? チャンスに気が付かずに無視した俺はどうすればいいんだ? それだな、要はそれだ。素直に自首すればって、それじゃ最初に殺しててもおんなじじゃないか。それで破滅する俺の家族はどうなる? あいつらはなにも悪かないだろう。まてよ、俺を苦しめるために清春が死ぬんなら、あいつはなんのために生まれてきたんだ? あいつの家族は? たとえなんか目的があるにしても、そんなことは神にだって許されないはずだ。あれ?なんかちがうな。人のせいにしてないか?俺。とたんに頭がスッキリしてきた。俺が清春を殺した、だけのはなしだな。単に。

 今度はニュースに出た。始まって、いきなりこんな感じだった。

(また抗争の被害者がでました。今日午後五時頃、福岡市早良区の路上で暴力団荒巻会準構成員の少年が何者かに暴行を加えられ、頭を強く打って先ほど城南区の病院で死亡しました。警察は少年が拳銃を所持していたことから一連の抗争事件と関係があるものとみて調べています。)そのあとすぐ夕刊を買いに行ったが載ってなかった。たぶん明日の朝刊だろう。とにかく、俺は未来永劫救われることはない。人を殺したからだ。そして、なぜか警察に捕まりそうな感じでもない。これでまたややこしくなった。神がいるとすればこの意味を説明してほしい。つまり人間はゲームの駒ってことか。もっとも、殺人事件だから偽情報を流してるとも考えられるが、ニュースの言ったことが本当だとすると、もしずーっと捕まらなかったとしたら俺はどうなるんだろう。普通に暮らしてくんだろうか。そして忘れるだろうか。それができたら、周りの人間にはいいだろうな。でも、俺はダメだ。救われないことには変わりはないんだ。だんだんダメになって破滅してくだろうな。でも、他の人間は巻き添えくわずにすむんじゃないか? このままじっとしてやりすごせば、ずっとこのまんまでいけるかもしれない。俺は学生服着てたんだし、目撃者がいればただの抗争で殺されたとは思わないはずだ。てことは、目撃者はいないと考えていい。知り合いで、俺と清春が一緒にいたトコを見たやつはいない。ヤクザの方も俺のことは知らないはずだ。二日盗聴してる間、清春は事務所で一度も俺とのことを口にしなかった。そんなことがいえる雰囲気じゃなかったようだ。それに抗争でヤラれたとなると、そっちの方に完全に目を奪われるだろう。いや、中村っていうヤクザは俺のことを知ってるぞ。俺が青林高校だって知ってたからな。清春から名前だって聞いてるかもしれない。どうする?


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