繰り返しⅤ
人質となった私は数人の大の大人の村人達に、神社のような物の柱にくくりつけられた。
私の隣には村長と、ギルドのような建物にいたあのおじさんがいた。
やがて日は落ち、雨が降り、その神社に一人の子供が現れた。
「こんにちは!…いや、こんばんはかな?アルフォートを返しにもらいに来たよ!」
そう言って、幼き少女はこちらに手を向け、広げる。
私も手を伸ばそうと体を動かす。
村長につけられた傷、縛られている縄が食い込み、二重での痛みを味わう。
私はある言葉を発しようとするものの、猿轡のようなものがはめられており、「ん〜!」という断末魔のような叫びしか発せなかった。
そして、私が言おうとした言葉は、「これが、一石二鳥ってやつか!」であった。
こんな時に軽いな!そう思われるかもしれないが、何度も繰り返しているんだ。新しい展開が来たら興奮するものだろう?
そんなことを読者に向けて語っていると、幼き少女。恐らくウルフェンスは、こちらへ向かい、一般人では絶対に出せない速度で、全力疾走してくる。
もちろん、すぐに攻撃に入れる体制で。
その時村長は刀を持ち上げ、黒い霧に包まれ、瞬時に私と神社を含む大きな範囲が霧に覆われた。
これは、私が以前使っていた「闇霧」という魔法だ。
少女の声が響く。
「アルフォート殿!どこですか!」
こんな何も見えない状態でわざわざ場所をバラすようなことをしたウルフェンスを私は、本当に本当に、馬鹿だと思った。
私の隣に待機していたギルドの老人は目にも止まらぬ速さで、濃い霧に突き進んでいった。
「死ね」。という冷たい音で発せられた老人の声は、私にも聞こえるほどであった。
その瞬間、今まで鳴り止まなかったはずの何かが、いつの間にか消え去り、音も、光も何もない世界に、空間にいるのだということに気がついた。
私は怖くなった。
この状況から抜け出さなければ、暗闇に一人取り残されてしまう。
そう感じたからだ。
私に何かが近づいてくる。
静かな空間でただ一つ鳴り響いた足音だった。
「アルフォート殿。少し待っててくださいね。いま縄を解きますから…」
そう言ってウルフェンスは私に寄り添い、縄に手をかけ、ゆっくりと解いていく。
そして、晴れていくこの世界には、目に入る世界には、二つの死体が転がっていた。
それは、先程のありえん速度で走っていた老人と、村長。二人の老いぼれの死体であった。
所詮人間、ウルフ達に敵うわけない。そう思い、一瞬私は見下した。
痛みに耐えた結果、私を縛っていた縄は、ウルフェンスの手によって解かれた。
「ありがとう。ウルフェンス」
そう、猿轡を外して言う。
「どういたしましてです…アルフォート…ど…no…」
最後は電子音に変わり、ドサッという軽い音がなる。
「え?」
そこで私はようやくウルフェンスの方を向いた。
心臓の音が聞こえる。
そのくらい私の心臓は高く、鳴り響いていた。
ウルフェンスの身体には大きな刀が何本も突き刺さっており、一般人だと、もう既に動けないはずの状態であった。
身体には殴られたような痣もたくさんあった。
私は、ウルフェンスに、命懸けで助けてもらったんだ。そう、理解した。
私はウルフ家達と全然過ごしていないはずだ。
信用という言葉のしの字も見つからないほどのはずなのに…そんな奴にウルフェンスは、命を懸けて、私という人質を救ってくれた。
命懸けで救うような存在でないはずの私を。何故、ウルフェンスが…?
ウルフェンスが口を開く。
まだ完全には死んでいなかったようだ。
震える手は止まらないが、少しホッとした。
そこでウルフェンスは、
「ごめんね…」
そう告げ、息を引き取った。
何故謝ったのか。それを理解できずに、私は目から出る汗を止めることができなかった。
一瞬の出来事で二つの命が失われてしまった。
その呆気なさに私は呆れた。
一瞬の出来事で大事な一つの命が救われた。
その喜びに浸っていた。
そして、復讐相手のはずの者の命が一つ失われた。
そして私はそれになぜだか、物凄く寂しさ、怒り、悲しみを覚えていた。
私の目の前から足音が響く。
少し重い響きをしている足音だ。
「なぁ、ウルフェンスは…どうした…?」
そう目の前に現れた巨体は私に問いただした。
「ごめん…」
謝ることしかできなかった。
「っ…!」
グシャァと音がなり、私の頬が殴られた。
かなりの距離を吹き飛ばされ、そこでその巨体へ目を向ける。
その目に宿されていた光は、怒り、悲しみであった。
「何故だ…!」
「ごめん…」
威圧され、問いただされても私は辛さで、苦しみで押しつぶされそうになっているため、謝ることしかできなかった。
「何故…こんな奴にウルフェンスは好意を持ったんだ…」
そう座り込んだウルフォースは呟く。
「好…意…?」
「あぁ、好意を抱いていなければ、お前は今まで生きることすらまま成ってないぞ…」
そう睨みながらに私の質問に答えていく。
その睨まれた状態が続くこと約15秒。
ウルフォースは立ち上がり、私に向け、腕を振り下ろした。
最後に見たウルフォースの顔は、滲んでいてよくわからなかった。
あの時を繰り返す。
取り敢えずウルフェンス達との再開を果たすしかない。
そう考え、いつもどおりに降りて、勇者の服を着て、ウルフェンスを待った。
そして、ウルフェンスは来た。
「こんにちは!お姉ちゃん!何してるの?」
「やぁ、ウルフェンス。待ってたよ…?」
ウルフェンスは一瞬やけに怯えた顔をした。
「な、何が目的…?勇者さん…?」
怖がった顔で私に問いただした。
「ふっ。目的は一つさ!それは…私をっ!」
生唾を飲み込む。
ウルフェンスも同様にだ。
「強くしてくれ!」
握りこぶしを作り、目の前で高く上げた。
「プッ…ハハハハハハッ!ハハッ!」
ウルフェンスは先程の怖がっていた表情から、笑顔に戻った。
「何だそんなことかぁ…面白いね、勇者さん!」
「そうかな?ありがと」
そう話しているとウルフェンスは手を差し出す。
「君の知っている通り、僕の名前はウルフェンス。君は?」
どこかに少し違和感を感じるが、ウルフェンスの手を取り、テキトーに思いついたあの単語、あのクッキーの名前をいった。
「アルフォートだよ!」
「アルフォートか〜いい名前だね!ところで、どうしてアルフォートは強くなりたいのかな?」
手を引き、少し歩いて、山道に入ったところで、あの冷たい目をして私に聞いてきた。
「それは…」
「それは…?」
生唾を飲み込み答える。
「君を…守るため…」
「フッ…僕を…?いや、流石に知ってると思うけど、僕君より強いからね…?なんなら、手合わせしても…」
「ごめん…」
そう私は頭を下げた。
「君は覚えてないのは知ってるけど、どうしても謝りたかった。そして、お礼も言いたい。ありがとう…本当に…ありがとう…」
目に汗が滲み、世界がぼやける。
「勇者の特権…か…それが…」
呆れたような口調でウルフェンスは答える。
「セーブロードを何度も繰り返すことができるんだもんね。そんな伝説が書かれてたよ。だから…そんなことが言えるんだよね」
そう、更に冷たい目で私を見た。睨んだ。
「…ごめん…」
「はぁ…僕は謝ってほしいわけじゃなくてさ…はぁ…もういいから、顔上げてっ…?」
そう言われ、私は顔を上げる。そうすると、ウルフェンスが不思議そうにこちらを見ていた。
「なんで…お前泣いてんだよ…気持ち悪いよお前…そんな特権ある奴に人権なんて効かないだろ?感情なんて消えるだろ…?なんで…そんな、人間らしくしてんだよ…っ!化け物!」
そう言って、ウルフェンスは一歩二歩と、後退りしていく。
私が近寄るとウルフェンスは、手を広げこちらに向けた。
「私特有の技。気を飛ばすことができるよ。お前みたいな化け物とは関わりたくなんかないよ。お前みたいな…普通の勇者は感情なんてないものだ。…もう関わらないでくれ…分かったら、そのまま下がって、村に戻ってくれ」
そう怖がりながら、冷淡に私に告げた。
んじゃぱああああああ
もう、グッチャグチャ
ストーリーはある程度保ててるけど、ほんと、文字がごちゃごちゃ〜
やっぱ朝書くかな〜
そういえば、ファン第一号の方はまだ見てくれてるかな…?というより、書籍化してからこういうの言うべきだけど、やっぱり僕にはできないと思うんだよ。書籍化。
ってことで、またバンバン書いてくんで!よろしこー!