アクション!
はい。7月までには必ず働き始めます。なのであと少しだけ。
迷惑かけてごめんなさい。
あと、ありがとう。
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遠くで声が聞こえる。
光がまぶたを刺激している。眩しい。
声が、段々と近くなる。
「起きろ!馬鹿、早く起きろって!」
五月蝿い。
目を開けると、タンクトップ姿のごりごりまっちょの男がいた。
「くるよ、急いで!」
女性の声。振り返ると、パンツスーツにメガネをかけたキャリアウーマンが拳銃を構えていた。
「え、なんですかこれ?」
戸惑う僕に、タンクトップは早口で言う。
「とにかく、お前も立て。あと1週間しかない!まずはまあ、物語のつかみだな。アクションだ!派手にいこうぜ!」
アクション?何を言ってるのか。
渋々立ち上がると、いつのまにかそばにいた白髪爺に拳銃を渡された。
「構えるんじゃ」
「へ?」
「いや、だからじゃのう、その銃を」
「はい?」
「構えるんじゃああああ!」
どこでスイッチが入ったのか、温厚に喋っていた爺は、急に白髪を逆り立て叫んだ。
「とりあえず四人揃ったわね。アクションはとにかくどんぱちしてればいいのよ。構えて!始まるわよ!」
言うと、キャリアウーマンはにこりと僕に笑いかけ、メガネ越しにウインクした。
どきりとした。
僕は急いで立ち上がり、あたりを見渡した。
デパートのフードコートのような場所だった。
向かいにある雑貨屋から、四人の覆面をしたものたちが現れた。
「撃て!」
タンクトップが声を上げた。同時に、白髪爺もキャリアウーマンも撃ち始める。
撃てと言われても。
「どんどん撃つんじゃ!」
打ち続ける彼らにつられて、僕も撃った。
弾はあらぬ方向に飛んでいく。
当たっているのかどうかわからないくらい、無我夢中で撃った。
気づけば覆面は倒れていた。
「大丈夫?怪我はない?」
キャリアウーマンが、へたっている僕の方に近づいてきた。
「は、はい!」
とても優しい声と顔に、僕は緊張した。
「オールクリアね。始まり、つまりつかみはとても大事。忘れちゃ駄目よ」
いいながら、キャリアウーマンがウインクした。
「はい!」
言っていることの意味はわからないが、ウインクにどきどきしたのは確かだ。
「話してる暇はねえぞ。ほら」
タンクトップが下を指差した。
「へ?」
床が真っ黒になっている。
「なんですか、こ、って、うわあああああああああ」
渦を巻く床。
落ちていく。
ぐるぐる廻る。
真っ暗だ。
どこだここは。
すとんと落ちて、浮遊する。
ヒノキシラカバスギコレラ、目を擦り、鼻水たらして雨を待つ。鬱々と、積もり積もって闇に落ち、暗中探求の最果てに、あるはずのものは、からっから。ないものねだりの泣き寝入り。大便小便、快刀乱麻にもつれあえば、つまり大は小をかねるとはこのことなり。