最後の七日間
〜一日目〜
もし、僕の記憶が一つずつ消えていくとしたらどんな記憶が消えるのだろうか。
嫌な記憶だけだろうか。
それとも、大切な記憶だけだろうか。
僕にとってとても不思議な七日間だった。
僕はもうじき死にます。
え?なんで死ぬかって?
それについてはこれから書いていこうと思う。
つまり、これは僕の遺書と言っても過言ではない。
僕が死ぬまでにやりたい事はほとんど無かった。
強いて挙げるとしたら、アニメ鑑賞くらいだ。
僕はアニメが好きだった。
僕は特に気に入ったアニメを五個だけ厳選してリストを作った。
なんで、そんな事をしたかって?
ある人がやってたんだ。
あれは七日前の話だった。
僕はいつも通り学校に行った。特に何か特色がある学校ではなく、ごく普通の県立の高校だ。
朝早く教室に着くと今日は珍しく人が多かった。そう、いつもはまだみんな集まっていない。今日はたまたまだろう。
「おはよ!」と声が聞こえた。
僕の一番仲の良い友達のキヨシだ。
僕はうん、おはようと返した。
授業中、僕は突然気分が悪くなって倒れた。目が覚めた時は保健室のベッドの上にいた。
それから早退して僕は病院へ行った。
医師からは肺がん。エンドステージ。と告げられた。
僕には理解ができなかった。
僕は昨日まで特に体調を崩すこともなく普通に生活していたからだ。
僕は医師の言葉を聞かずにその部屋を「うわぁぁぁぁぁ!!」と叫びながら飛び出した……というのは嘘だ。
意外なことに、人間はこういう時、冷静になっているものだ。
とりあえず僕は家に帰った。
玄関を開け、リビングへ行くと男の声で「おかえり!」と聞こえた。
ん?待てよ、この家に男がいるのは僕だけだ。
声のした方を向くと、そこにはいつもいるはずの姉ではなく僕と全く同じ姿をした男がソファに座っていた。
僕は真っ先にドッペルゲンガーという単語が頭に浮かんだ。
すると、男が質問してきた。
「さて、問題!僕は誰でしょうか?」
僕はドッペルゲンガーだろ…?と言った。
すると男は「んー…不正解!僕は天使!」
はぁ…?こいつ頭おかしいのか?自分が天使?良い病院を勧めてやろうか。という思いと共にイライラが隠せなかった。
「君、もう寿命でしょ?そんなに若いのに大変だよね〜。そんな君に提案がある。君の記憶を一つ消す。その代わりに寿命が一日延びる。どう?」と男は言い出した。
なんで僕が死ぬ事を知っている?それに、本当に何を言っているんだ…?
「あれ?もしかして理解出来てない?」
当たり前だ。
「だーかーらー!記憶を一つ消して君の寿命を一日延ばすことができるの!」
あぁ…僕は頭がおかしくなってしまったようだ。と思っていた。
今日はもう寝よう。そう考えていた。
「仕方ない…試しにやってみようか。何の記憶を消そうかなぁ」
なら、僕の元カノの記憶を消してみろ。
「え?何言ってるの?君には決める権利はないよ」
できないからだろ。
「んー、よし決めた!記憶からペットを消そう!」
そんな事出来るわけがないだろと思い僕は無視して眠りについた。