わたしの選択する未来
わたしは目の前に差し出された水の入ったコップを受け取ると、口に含んだ。
まだ熱の残る体を潤してくれた。
「少しは元気になったみたいだね」
杉田さんはそういうと微笑んだ。
「そうかな」
「見たらすぐに分かるって。休息を満喫できたんだ」
「できたかな」
わたしと尚志さんの関係は大きく変わった。わたしは彼を選ぶか夢を選ぶかの二択を迫らせていたのだ。
「千春のお兄さんと何かあった?」
その問いかけに一瞬迷った。だが、彼はわたしと尚志さんのことを大まかにだが知っていた。隠し事をするほうが気が咎めてしまい、彼との間にあったことをすべて話していた。
彼はわたしの話を時折頷きながら聞いてくれた。
「千春のお兄さんが迷う気持ちもわかるよ。僕もこれからどうしようか迷っているから」
「杉田さんはやめるの?」
「まだ決めていない。けど、いくつか藤井さんが勝手に仕事を受けてしまって、それだけはこさないといけないみたいだけどね」
「すごい。わたしはまだ来てないのに」
彼は肩をすくめて微笑んだ。
「本当にそう思う? きているみたいだよ。でも、君が迷っているから話を持ち出さないだけでさ」
「本当に?」
「それっぽいことを聞いたからね」
「聞いてくる」
「そうしたらいいよ」
わたしは杉田さんに見送られ、本井さんの部屋に行くことにした。
わたしが彼女の部屋をノックしようとしたが、ドアの隙間から本井さんの話声が聞こえ、動きをとめる。彼女は携帯で誰かと話をしていたのだ。
「分かりました。検討はしてみますが、いい返事ができるかは分かりません。はい、すみません」
その言葉が切れるのを待って、わたしは彼女の名前を呼んだ。
彼女はわたしと目が合うと、笑顔を浮かべた。
「どうしたの?」
本井さんが驚いたように目を見開いた。
「わたしに仕事がきているって杉田さんから聞いたけど」
「きていることはきているわ」
「どんな仕事ですか?」
「映画の仕事と、この映画のことでの取材」
「映画ってどんな映画?」
「決めたの?」
わたしは本井さんの言葉に返事ができなかった。
まだ迷っているからだ。
「詳しい話は後で教えるわ。まだ確定じゃないし、下手に教えることであなたの決意を妨げる気がして、ね。ただ、いい話も結構来ているわ」
わたしは彼女の言葉に頷いた。
「タイムリミットまではあと少しよ。それまでに決めなさい。あなた自身でね」
わたしは彼女の言葉に頷くことしかできなかった。




