表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

覚悟を決めました。

――手鏡の中には、驚いた表情でこちらを見ている美少女がいた。


「これが……。俺……?」


呟くと、鏡の中の少女も俺に向かって呟く。どうやら間違いないようだ。目はぱっちりと大きく、バランスのとれた顔立ちだ。胸も何か大きい気がする……。さっきからの体の違和感はこれかな。一番ショックなのは、長年連れ添った息子の存在が感じられないことだが……。


「自信を持って良いと思いますよ! きっとこれなら、どんな男の子も一目ぼれですよっ」

「いやいやいやいや、全く男に興味なんてありませんし! 嬉しくないです」


体は女になったかもしれないが、心まで変えられてたまるか!


「お待た!! パパが来たぞ~」


パパとか言うな気持ち悪い。ノックもせずに親父が入ってくる。


「お~、四日ぶりだな。娘よ。早速、検査するな」

「そ・れ・は・い・い・か・ら、俺を戻せええええ」

「ぐっはっ、声かわえええええ! 無理だから。戻せないから。前に説明したじゃんよ。それに仮に戻せたとしても絶対戻さないもんね!!」

「とりあえず!! 先に検査をお願いします先生。何か問題があったら大変です。優人さんも言いたいことはたくさんあると思いますが、一度落ち着いてください」


少し大きな声で俺たちを注意する三枝さん。学校にこんな先生いたらいいなぁ。いや、そんな事考えてる場合じゃないな。


「三枝君の言うとおりだな。検査するから横になれ」


しぶしぶ横になる俺。顔を近づけて、腕や足を順番に確認していく親父。そして、当然のように服を脱がしに掛かる。


「っておい……。ナチュラルに何してやがる」

「何って検査だよ? 見ないと分かんないだろ!」

「せ・ん・せ・い? そういった検査は私に一任されていると思いますが?」


笑顔で親父に迫る三枝さん。笑ってるけど、目が全然笑ってないよ……。


「ははっ冗談……。冗談だよ……」


あまりの迫力にさすがの親父も引き下がる。


「うん、問題はなさそうだ。これなら、明日からリハビリに移れるかな。後、何度も言うが、本当に元には戻せない。現状を受け入れなさい」


急に真面目なトーンで話し出す親父。何度言われても納得できねぇよ……。


「優人さん……。当事者でない私にはあなたの気持ちは分かりません。ですが、もう前を向くしかないのです。私に出来る事があれば、必ずあなたの力となるとお約束します。ですから、少しずつで良いですから、ありのままを受け入れていきませんか?」

「親父も、三枝さんもちょっと席を外してくれないか。落ち着いて一人で考えたい」


俺がそう告げると、二人は何か言いたそうではあったが、ひとまず退室してくれた。


「さって、気持ちの整理をするか」


自分で捲いた種とはいえ、納得する事は出来ないだろう。だが、いくら嘆いた所で、憤った所で、何かが変わるだろうか? いや、きっと変わらないだろう。受け入れられないけれど、理解はしていこう。


過去へ後戻りは出来ない。だが、きっと未来は変えられる。この選択が正しかったと言えるような人生にするしかない。これから先、今まで俺が過ごしてきた十七年間よりも、ずっと長い道のりが俺を待っている。暗鬱な青春は嫌だし、これから先もそんな気持ちで過ごしたくない。それに親父は『現状は』と言っていた。今後、男に戻る方法が出てくるかもしれない。


「よし……。気持ちは落ち着いた。親父たちを呼ぶか」


悩んでも答えはきっと出ない。なら、行動だ。

気持ちを固めると、俺は部屋に備え付けられている電話機を手に取った――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ