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罪過の塔⇔世界保管庫

作者: 柳乃朋美


 あらゆる世界の何処でも無く、

 あらゆる場所と繋がっている。


 現代の建設技術の全てを全否定するような只管に天へ伸びる高い塔。

 横風に晒されても微動だにしない不可思議な塔。

 塔へ到る道は唯一であるがその道へ繋がる場所は数多。

 

 触れてみた外壁は何の変哲も無いただの煉瓦。

 巨人でも通るのかと思う観音開きの巨大な扉の、右の一枚に設置してある人一人が通れるサイズの古びた扉。

 叩いても大抵の場合返事は無く、訪問者は自らの手でその入り口を開くだろう。

 

 そして息を呑む。


 何に。壁をぐるりと取り囲み天へ延びる本棚を見てか。

 それともその本棚を埋め尽くす膨大な書物を見てか。

 

 確かに息を呑まずに入られないだろう。

 しかしそれ以上に驚くのは、

 訪問者の気配を察し遥か高みより舞い降りたる、

 背に翼を生やした青年の姿。


 彼は天使か。

 否、騙されてはいけない。

 見たまえ諸君、背の翼を。

 翼は羽ばたかず、淡い光を放つだけ。

 見よ、その翼から生えるベルトを。それが彼の両肩と腰に周っているのを。


 疑問に思ったならば問いかけるがいい、この青年に。

 「その背の翼は何ですか」と。

 そうすれば青年は笑って答えるだろう。

 「これはこういう形をした重力制御装置だよ」と。


 青年よ、お前は何者か。

 この塔は何なのか、

 この書物は一体何か。


 問いかけに、彼の青年はにやりとニヒルな微笑を浮かべて優雅にお辞儀しあなたの手を取るだろう。

 そして言うのだ。

「この塔を訪れる者はあなたが思う以上に少ない。あなたが私に回答を求めるならばあなたは私の話し相手になるべきだ」

 パチリと青年は指を鳴らす。そうすれば床に円形の穴が開き、中からテーブルと椅子が競り上がって来るだろう。

 テーブルの上のポットを手に取り、ティーカップに湯気立つ液体を注いで、青年は言葉を続ける。

 「さぁ椅子に座りなさい。話をしよう私の友人。私は立ち話は嫌いだ」

 言いながら、既に自分は椅子に座って、

 呆然と立ち尽くす訪問者に笑いかける。

 「焼き菓子は嫌いかね?」

 

 ここは彼の空間。

 もう彼のペースからあなたは逃れられない。

 


 だから今は、しばしの間、

 彼の長いおしゃべりに、苦笑して付き合うのが最善なのだ。


むかーしに書いたものをフォルダ整理にて発掘したので、軽く手直しして晒し。

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