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月には帰りません!  作者: 夏岸希菜子
第0話*佳久也誘拐事件
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鬼ヶ島邸に来てみれば

 鬼ヶ島(おにがしま)天都(そらと)の家は、絵にも描けないレベルの豪邸だった。金持ちだとは知っていたが、門の内側まで来たのは初めてなのだ。

 まず、鬼ヶ島家に着いて寝室に通された。そして、「脱げ」と天都。佳久也(かぐや)は抵抗もむなしく強引に脱がされた。何をされるかと思えば、天都は着替えを持って来ていた。佳久也に貸してくれるという。着て安静に寝ていろということらしい。

「ただの着替えで良かったです……」

 ベッドの(ふち)に腰掛けて、佳久也は呟いた。

「いくら僕が変態でも病人を襲う趣味はないさ」

 本人にも変態の自覚はあるらしい。紳士的な対応をする天都を少し見直しかけた。

 だが、渡された「寝間着」を広げて見て、やっぱり変態は変態だと思い直す。これは寝間着ではない。

 黒を基調としたデザインに、フリルがふんだんにあしらわれたエプロンドレスである。無論、女物だ。

「……これはどういうことですか、先輩」

 女装? コスチューム・プレイ?

「似合うと思ってね。つい、佳久也くん専用に作らせてしまったんだ」

「着てた服を返してください」

「さて、そんなものあったかなあ?」

 あくまでしらを切るつもりらしい。確か、あの後佳久也の衣服は、お手伝いさんと覚しき人が持っていってしまった。返してもらえるのだろうか。

「とぼけないでくださ――ふぇっくし!」

 佳久也がくしゃみをすると、天都は急に慌て出した。

「佳久也くん! 大丈夫か? 早く着ないと体が冷えて風邪を引いてしまう!」

 佳久也は、もしかして返してもらえるのかと期待してしまったが、それ以上に天都は変態だった。

「よし、僕がこの腕に抱いて温めてあげようじゃないか!」

 がばっと両腕を広げ、佳久也に抱き付こうと勢いよく飛び込んできた天都。

「ぎゃああああ無理無理無理っ! 着ます、着ますよ! 着れば良いんでしょ!?」

 枕を投げつけながら、金切り声を上げて佳久也は降参した。走って逃げる気力も起きない。頭が痛い。病状は悪化の一途を辿るばかりのようだった。


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