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美桜と夜の森の迷子

 夜の風は、夏の残り香を運んでいました。

 美桜はベッドの上で目を覚まし、窓の外をそっと見ました。

 月が高く上がり、庭の木々を淡く照らしています。

 普段なら寝ている時間ですが、今日はどうしても気になることがありました。


 ぬいぐるみたちの動きです。

 夜になると、彼らはひっそりと部屋を抜け出し、庭や森へと小さな冒険に出かけます。

 美桜はその存在を知ってしまったからには、ただ寝ているわけにはいきませんでした。

 そっとベッドを降り、毛布を踏まないように床を歩きます。

 ふわりとぬいぐるみたちの気配を感じながら、窓を開けて外へ。

 月光に包まれた庭は静かで、でもどこか、生き物たちのざわめきが漂っています。

「……みんな、どこにいるんだろう」

 美桜はそっと草をかき分けながら歩きます。

 すると、森の入口で、ひそひそと声が聞こえました。

「……こっち、こっちだよ」

 声の主はモモでした。

 小さな光のように見えるモモの影が、森の中へと誘います。

 美桜は足を踏み入れました。

 夜の森は昼間と違って、柔らかく、優しい闇に包まれています。

 虫の羽音、枝が揺れる音、遠くの小川のせせらぎ……

 すべてが夜だけの秘密の音を奏でています。

「ねえ、美桜」

 モモの声が近くで聞こえました。

「ちょっと助けてほしいの」

 美桜は立ち止まりました。

「助けるって、誰を?」

 モモが指差した先には、小さな影。

 葉っぱの中に隠れているのは、迷子になった森の小さな精霊でした。

「迷子になっちゃって……音も道もわからなくて」

 小さな精霊は震える声で話します。

 美桜はそっと手を差し伸べました。

「大丈夫、私がいるよ」

 ぬいぐるみたちは一列になり、精霊を守るように歩き始めました。

 ハリーは音の種を使い、森の方向を示す小さな光を生み出します。

 ニコは宝の箱を持ち、迷子を安心させるための温かい光を放ちます。

 トトはにおいをかぎ、森の道を慎重に確認します。


 美桜はその中を歩きながら、ぬいぐるみたちの力を改めて感じました。

 それぞれが持っている特技や勇気が、迷子の精霊を安全に導くために重なり合っています。

 小川を越え、古い木の間を抜けると、迷子の精霊は少しずつ安心したように笑いました。

「ありがとう……みんな、ありがとう」

 声はまだ小さいけれど、森の中にしっかりと響きます。


 モモも、ふわりと光を揺らしながらうなずきました。

「これで、迷子さんも安心だね」

 ハリーは森の音を整えながら、にこっと笑いました。

「音もちゃんと戻ったよ」

 美桜は心の中で、小さくつぶやきました。

「ぬいぐるみたち……すごい」

 ただのぬいぐるみではない。

 彼らの勇気と優しさ、そして守る力が、夜の森をあたたかくしているのだと実感します。


 森の奥で、月が高く輝きます。

 小さな精霊が森の家に戻ると、みんなで静かに手を振り、別れを告げました。

 美桜はそっとぬいぐるみたちと並んで、森の出口まで歩きます。


 部屋に戻ると、夜は深まり、森も静かになっていました。

 窓の外には、微かに森の精霊たちの光が揺れています。

 美桜は胸の中で感じました。

 ぬいぐるみたちが夜の森を守り、そして自分もその一部になれたことを。


「ありがとう、みんな」

 小さな声でつぶやきながら、美桜はベッドに戻ります。

 そして、ぬいぐるみたちと一緒に、安心して夜の眠りに落ちていきました。


 夜の森は、今日も静かで、でも確かに、生き物たちの笑い声やせせらぎの音が響いていました。

 その音のすべてが、美桜とぬいぐるみたちを、優しく包み込んでいます。

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