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異世界まで来て、飯食ってるだけなんだが〜スキルはあるけど、自由に飯食ってるだけ〜  作者: 咲村 えん
第2章 あたしの料理で、誰かが笑ってくれるなら
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【プロローグ】焦がし根菜のスープと、わたしの物語

ついに日和のプロローグに入りました!



夕焼けの空が、まるで煮詰まったトマトソースのように赤く染まっていた。


カウンター越しに見えるのは、今日も賑やかなギルドの食堂。


あたしはその奥、厨房の片隅で、黙々と包丁を動かしている。





――焦げないように。

――旨味が逃げないように。

――あの人が、「美味しい」って笑ってくれるように。


「ひよりー!“焦がし根菜のハーブスープ”、追加入ったよー!」


「はーい、すぐ出します!」


返事をしながら鍋の火加減を少しだけ強める。

タイミングを外すと、香りが逃げてしまうから。


ここは、《グルメギルド》支部の食堂。


異世界にある、少し変わった場所。



旅人も、冒険者も、魔法使いも、獣人も。

種族も、身分も関係なく――


“うまい飯”を求めてやってくる、食堂。


……あたしは、そんな場所の、ただの料理人。


いや、正確に言うなら――


気がつけば、ここにいた。


異世界で目を覚まし、森の神殿の中で倒れていたあたしを、助けてくれたのがこのギルドの人たちだった。


「ねえ、ひよりちゃん。最近、スープの味、ますますよくなってるよ」


ふいに声をかけてきたのは、ギルドの厨房で最も長く働いているおばあちゃん。


くしゃっとした笑顔と、包み込むようなまなざし。


「ほんと? よかった……今日のは、マレタ根をいつもより長く炒めてみたの」


「ふふ、そういう工夫ができるのが、ひよりちゃんらしいのよ」


このおばあちゃんは、わたしの命の恩人。

……いや、正確には、


“おばあちゃんのおばあちゃん”が、かつてこの世界にいた『作り手』と呼ばれる料理人だったと話してくれた。


あたしが異世界に来たことにも、きっと意味がある。


そう感じたのは、そのおばあちゃんの言葉を聞いたときだった。


 


「料理はね、誰かの心に火を灯すの。

それは魔法よりも強くて、時には世界を変えるのよ」


 


……たった一杯のスープが、誰かの心を救うなら。

あたしは、今日もここで、包丁を握る。


焦がし根菜のスープを、丁寧に煮込む。


いつかまた、あの人と出会える日まで。


 


✦To be continued✦


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