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第1話「大和撫子なメスガキって清楚なんですか?」

なんやかんやあって、地球はメスガキに負けた。


「あひん」


地球全土に響き渡るようなその不可思議な音と共に

世界中の女性は≪メスガキックス≫と呼ばれる謎のウイルスに感染。

瞬く間にメスガキとなる。

そして男はメスガキに負け続ける雑魚となった。


世界がメスガキに屈してから数年が経ち

道を歩けばモブメスガキに屈するモブ雑魚に溢れ

近所のメスガキ婆さんは爺さんを罵る。

幼いころからメスガキには必ず屈するということを徹底的に叩き込まれる。

この世界にはメスガキ以外の女性はいない。

それが俺たちの常識だ。


あらゆるコンテンツはメスガキ化し、メイド喫茶はメスガキメイド喫茶。

ご主人様ではなく豚。

メスガキになじられるためだけに行く喫茶店となっていた。

正直何が面白いのか俺には理解できない。

というのも、俺は生まれながらに何故かメスガキに強い耐性をもっている。

自慢じゃないが今まで一度もメスガキに屈したことはない。

これがバレるとメスガキに捕まり研究されかねない。

だから俺は適度にメスガキに屈したフリをして生きている。


「そうだ、コーヒー飲もう。」


現実を受け入れがたい俺は喫茶店に入る。

メスガキミシュラン星1か。

メスガキミシュランとはメスガキ度の強さを表している。

星の数が多いほどメスガキ度が強く危険であるという証だ。

どうやら世の中にはより強いメスガキに屈したいという変態が存在しているらしい。


「いらっしゃ~い♡」

「雑魚1名ご案内でぇ~す♡」


いたって普通レベルのメスガキ喫茶店。

コーヒーの香りが心地よい。

俺は席に案内される。

思っていたよりもメスガキ度は低いようだ。

そう油断していると店員が俺の耳元に近寄ってくる。


「喫茶店でゆっくりしたいなんて…ざぁ~こ♡」


ASMRメスガキだと…!?

稲妻で貫かれたかのごとく衝撃が走る。

耳元で囁かれ俺は全身がビクビクと震える。

なんという破壊力。

清楚系の見た目から醸し出される小悪魔っぷり。

恐ろしい喫茶店だ。

俺じゃなきゃ早々に屈して敗北しているぞ。

これでメスガキミシュラン1つ星とは恐ろしすぎる。

思わず両肘をテーブルの上に置き、手を顔の前で組む。


「ご注文はお決まりですか?雑魚のお兄さん♡」

「コーヒーとサンドイッチで。」


俺は全然効いていないぞ、と言わんばかりに答える。

メスガキに簡単には屈しないというプレイは世に広まっている。

我慢の出来る男はよりメスガキにモテるとかいう意味のわからない風潮だ。

が、ここは有難くそれに乗っかる。

すると店員は屈しない俺を屈させてやると言わんばかりの顔で去る。

店員が離れるなり俺は水を飲む。


「くそっ…!ドストライクじゃないか!なんなんだあの見た目は!」


机を叩く俺。


清楚系の大和撫子。ほのかに見える甘い表情。

およそメスガキとは感じられないような気品すら感じる柔らかさ。

透き通るような声で囁いてくる。

まさに破壊力の権化…!

メスガキじゃなかったら間違いなく一瞬で堕ちてるといっても過言ではない!!

誰か俺に教えてほしい。

大和撫子なメスガキって清楚なんですか!?

だが現実は無常。

俺の心の中の声は誰にも届かないのである。


などと俺が自分でツッコミを入れていると

先ほどの店員が注文したものを持ってくる。


「お待たせいたしました。コーヒーとサンドイッチです。」

「あ、はい。どうもありが…」


返事をしようとした俺にまたも近づいてくる店員。


「コーヒーにミルクは…必要かなぁ?♡」


テーブルに軽く腰かけ足を開く店員。

ミルクを片手に俺を見てニヤニヤと笑いながら挑発してくる。

くそっ…!見えそうで見えない絶妙なラインの足の開き方だな。

正直めちゃくちゃ悔しい。

よく見ると完全にブラックのままのコーヒーのみがテーブルに置かれていた。

手元にはミルクやシュガーの入ったカゴ。

欲しい。

自慢じゃないが俺は苦いのはそこまで得意じゃない。

というかミルクを入れていい感じに甘めに飲みやすくするほうが好きだ。

ブラックを好んで飲んでいるやつはどうかしていると思う。

だが今の俺の心はそっちにない。

すみません店員さん、あと2cmほど足を横に開いて貰えませんか。


「くっ…ひ、必要です。」

「あはっ♡ミルクがないとコーヒーが飲めないこども舌なんですね♡ざぁ~こ♡」


そういうと恍惚な表情でうっとりしながらミルクを注ぎ入れる。

なんでいちいちそんなエロい表情でミルクを入れるんだよ。

狙ってんのか。

アレか?白い液体をトロトロと注ぐ感じが何かいいとかいうアレなのか?


「ストップって言うまで、いっぱいミルクいれちゃおうかな♡」

「ほらっ♡言っちゃえ♡ミルク我慢できないからもうやめてって言っちゃえ♡」

「くっ…このまま入れ続けられるとコーヒーがカフェオレみたいになっちまう…!」

「くすくす♡でもお兄さんは雑魚舌だからカフェオレみたいに甘くないと飲めない、おこちゃまだもんね♡ざこ舌っ♡ざこ舌っ♡」

「でもだーめ♡ミルクはここまで♡あ~♡お兄さん、ミルクほしいよおってなってるのに入れて貰えなくて可哀想ぉ~♡ざっこ~い♡」


そういうと店員は満足しながらミルクを持って下がっていった。


「くそっ…!調整の上手いメスガキがよぉ!!!」


再び俺は机に拳を叩きつける。

結局ミルクは良い感じにほんのり甘いところまでしか入れられなかった。

普通に美味い。


コーヒーを飲み終えてサンドイッチも食べきった俺は会計をすませるためにレジへ向かう。

するとそこへやってきたのは大和撫子の素敵な雰囲気を醸し出す見た目がメスガキで残念なこと以外は完璧なお姉さん(実年齢は不明)だ。


「お会計は520円でぇ~す♡」


意外とリーズナブルなようでワンコインでは支払いきれない料金に悔しさが滲む。

こんなところでも悔しい気持ちにさせてくる。

流石メスガキミシュラン1つ星だ。


「それと…お兄さん♡これ、あげますね♡」


そこへ手渡されたのはクーポン券だった。


「それを使うと次回は無料でコーヒーが飲めるから金銭力のない雑魚なお兄さんでもまたこれちゃいますよ♡」

「あーあ♡これでお兄さんはまたこのお店で自分の好きなようにミルクを入れてもらえなくて悔しい気持ちにさせられちゃいますね♡」


そういうと店員さんは俺の耳元でこっそりと囁く。


「ちなみに今日は黒色ですよ♡」


また行こう。

店を出た俺は真顔でそんなことを考えていた。

店員さんがメスガキなこと以外は好きな雰囲気の店だ。

そうだ。

これはメスガキに屈したわけではない。

クーポンがあるから仕方ないことなんだ。

間違ってもパンツに釣られたわけじゃない。

俺は心の中で言い訳をしておくことにした。





「ということがあった。」


俺はクラスメイトにメスガキ喫茶の話をする。

もちろんパンツの話は伏せて。


「ミルクを入れる権利すら持たせてもらえないとか、流石にお店として大丈夫なのかそれ。」


そういうと呆れたように笑う男。

相沢隼人(あいざわはやと)

子どものころからの付き合いがある幼馴染だ。

妹を溺愛していることもあり妹以外には絶対に屈しないという重度のシスコンである。

他の女には強いが妹には秒で屈する雑魚。

イケメンなのにもったいない。


「いや、待てよ…?妹に同じことされたら確かに最高のシチュエーションだな。」


もう一度言うが、こいつは重度のシスコンである。


「しかしながら清楚なようで言葉の節々からはメスガキ臭が漂うとは。なかなかハイレベルなお店ですね。次回は是非とも僕を誘ってください。」


メガネをクイっとしながらもう一人の男が答える。

柳澤剛(やなぎさわつよし)

名前とは裏腹にメスガキにすぐ屈する男だ。

女に耐性が無さ過ぎて話しかけられるだけで屈するパーフェクトテンプレ雑魚。


「柳澤くん、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけどぉ~♡まさか断らないよねぇ~?♡」


クラスのメスガキ女子が柳澤に声をかける。

柳澤は全身をビクビクと震えさせて勢いよくあひんと叫び震えだした。


「あひったな?」

「ああ、あひった。」

「あいつやっぱり名前をヨワシに変えたほうが良いんじゃないか?」

「あれほどまでにツヨシが似合わない奴もいないよな。」


相沢の心無い華麗なツッコミが入り、俺もそれに興ずる。

それが俺たちの学園生活のテンプレだ。

ていうか、あれで柳澤も罵られながらきちんと手伝いをこなすのだから凄い男だと思う。

殆どの男はあひりすぎて使いものにならなくなってしまう。

屈しやすい雑魚なこと以外はポテンシャルが高い。


「っと、悪い。ちょっとトイレいってくるわ。」


俺は相沢に声をかけトイレへ向かう。

一息つきながら俺は自分の置かれた状況を今一度、振り返る。


俺の名は佐古井健介(さこいけんすけ)、高校生。

4人家族の長男。

父はそこそこの稼ぎのサラリーマン。

母は俺に馬乗りになって起こすのが趣味のメスガキ。

そして俺を1日1回煽ることを日課としている1つ年下のメスガキの妹に囲まれて暮らしている。

俺は生まれながらにして強いメスガキ耐性を持っていた。

それ故に、早い段階でこの世界の異常な状況に気が付いている。

家族からはメスガキに屈したフリをするようにと言われている。

それ程までに、メスガキに屈しないことは異常なことだ。


俺たち男はメスガキに屈する雑魚であるという英才教育を受けている。

だからこそ多少は耐えられても最終的にはメスガキに屈してしまうようになっている。

そういったことを教え込まれるメスガキ学というものまで存在するのがこの世界だ。


「なんだよメスガキ学って。どこまでもふざけた世の中だな。」


そんなことを独りごちりながら廊下を歩いていると女子生徒に話しかけられる。


「そこの君♡」


まずい。今、メスガキをバカにしたことを聞かれてしまったか?

この世界においてメスガキ教育をバカにする行為は極刑レベルの犯罪行為だ。

メスガキ当局に通報されようものなら俺の体質がバレてしまう恐れがある。

仮に通報されなかったとしてもそれを脅しに使われて一生豚として飼い殺しなんてこともあり得る。

焦りを抑えられない俺の背後に女が近づく気配がある。


「ハンカチ落としたのに気が付かないなんて…ざぁ~こ♡」


不意に耳元に囁かれる声。どこか聞き覚えのあるその響き。

これは…ASMRメスガキ!?

俺は後ろを振り返る。

刹那、俺はそのあり得ない状況に身動きが取れなくなる。


「また会ったね。お兄さん♡」


大和撫子。メスガキでもない俺たちと変わらない年頃の女性がそこにいた。

一体どういうことだ。

メスガキ以外の女の子が存在しているのか?

そんなことがあり得るのだろうか。

目の前の女性を怪訝な表情で見つめる。

彼女はそんな俺を見て不思議そうにこちらを見つめ返してくる。

俺は怪しまれないように返事をする。


「あ、ありがとうございます。ハンカチを落としてしまう雑魚ですみません。」


俺は確認を取るように目の前の女性を見つめる。

すると、女性はあの喫茶店で出会った店員のような艶のある表情で俺を見つめ口を開く。


「ふふっ♡またお店に来てね雑魚舌くん♡」


目を擦りもう一度見直す。

そこには喫茶店で出会った大和撫子なメスガキが歩いていく姿があった。

俺の胸の鼓動は心なしか高まっていた。

世界観と用語

メスガキックス:とある科学者が作ったメスガキウイルス。

メスガキミシュラン:メスガキ協会と呼ばれる場所が決めてるメスガキ度ランキング

メスガキ当局:メスガキを保護するために生まれた治安局

メスガキ:とても強い。1度でもその人に心から屈したら逆らえなくなる。

雑魚:メスガキに屈した証。屈したメスガキ相手に無条件で屈する。

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