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名探偵の助手  作者: 青葉
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 ということで、僕とノア君はいったん大広間に戻ってきた。

 大広間では、椅子にぐったりと座って目を閉じているオーリーさんを横にいるリチャード君が心配そうに見ていた。ジェットさんはそんな2人を見守るように壁際に立っている。

「オーリーさん、具合はどうですか?」

 僕が声をかけると、オーリーさんはゆっくりと目を開き、口を開いた。

「少しはましになったよ。」

「本当ですか?まだ少し体調が悪そうに見えますけど…。」

 リチャード君がすかさずそう言った。

「万全ではないけど、大丈夫だ。2人は何か発見はありましたか?」

 さっきよりも少し姿勢を整えてオーリーさんが僕たちを見る。

「いいえ、残念ながら何も。」

 ノア君はひどく残念そうな声で話しながら首を振る。あれ?さっきはあるにはあるって…。

 疑問の声を飲み込み、隣のノア君の顔を見下ろすが、その顔からは何も読み取れない。ただ、なんとなく空気を呼んで黙っていた。そんな僕の様子に満足したのかノア君は少しだけ口角をあげる。

「そこで、皆さんにもお話を伺いたくて。昨日の夜のことをね。」

「はあ、まあいいですけど。俺らのことを疑ってるんですか?」

 リチャード君は疑わし気な目でノア君の方を見る。オーリーさんは黙ってじっとノア君を見ている。

「いや、疑っているわけじゃないよ。ただはっきりさせておきたくてね。そうだな、まずはリチャード君、昨日の晩餐会の後は何をしていたのか教えてほしい。おおよその時間つきでね。」

「……昨日は、夜ご飯食べ終わった後、21時ぐらいに馬小屋に行ってゴアの様子を見に行ったんだ。ゴアは俺の愛馬の名前。泊っている間は、子爵家でゴアの面倒も見てくれるって言われたけど、心配で一応…。部屋に戻ったのは21時30分頃だったと思う。ゴアの様子を見に行った後は風呂に入って寝た。たぶん22時30分ぐらいかな。こんな感じですよ。」

 言い終わると

「ありがとう。」

「あ、待ってください!そういや、馬小屋の近くの部屋はダリル様の部屋だったんだ。俺がゴアの様子を見てる時は、部屋の明かりがついてたぜ!」


「なるほど。その時ダリル様の部屋の窓は開いていたか覚えているかい?」

 リチャード君は、昨日のことを思い出そうと目をつむりながら眉間に皺を寄せている。

「あ~…開いてなかった気がするな。うん、開いてなかった。俺がそろそろ中に戻ろうと思ったのは、雨が降り始めたからで…なのに、今日の朝ダリル様が殺された時は窓が開いていて、あれ?と思ったんだ!昨日は窓、開いてなかった気がしたから。」


 その答えを聞いて、ノア君は満足そうにニヤリと笑った。それはいつもの貴族然とした笑みとは違った。ただその表情は一瞬で消え去り、すぐに真面目な顔で今度はオーリーさんに問いかける。

「オーリーさんの昨日の話を聞いても?」

「はい。私は昨日、晩餐会の後は自室に戻ってすぐにお風呂に入っていました。その後は部屋で帳簿の整理をしていましたが、疲れていたので、22時には寝ていたと思います。」

 顔色は優れないが、しっかりとした声でオーリーさんが話す。

 実際、昨日僕はお風呂に向かう通路ですれ違った。確か、その時から…

「昨日から体調が悪かったみたいですが、大丈夫ですか?」

「ええ。もともと長旅で疲れていたのですが、…少々、香りがきつかったので。」

 オーリーさんがためらいがちに話す。香り?

「ああ、コランバイン子爵とエミリア嬢の香水はかなり強かったからね。近い席にいると頭痛がするぐらいだ。僕もすぐにお風呂に入ったしね。」

 ノア君が苦笑しながら補足する。確かに、強めのバラみたいな香りはしていたが、僕は席が離れていたから2人ほどは気にならなかったな。

「あれ?でもノア君とオーリーさんはお風呂で合わなかったのかい?」

「ああ、僕は部屋についていたからね。」

 す、すごい格差だ…。

 僕らがびっくりしていると、ノア君は皆を安心させるようににっこりと微笑んだ。

「さあ、犯人がだいたい絞られました。次はジェットさんにも話を聞きましょう。」

 そう言って壁際で立っているジェットさんを呼びつけ、椅子に座らせた。

「ではジェットさん、昨日の話を聞きたいのですが…まずは確認したいことが1つあります。昨日、ダリル様の部屋へ紅茶を淹れに行きましたか?」

 ジェットさんは首を振りながら答える。

「いいえ。昨日は夕食会の後は誰からもお呼び付けされることはありませんでした。」

「なるほどね。じゃあ、ジェットさんにお願いがあります。ティーカップの数を確認してもらえませんか?ダリル様の部屋にあったものを除いてさらに1つ、なくなっているはずです。」

 言われた通り、ジェットさんが食器棚へティーカップの数を確認しに行く。

「あっ!ノア様のおっしゃる通り1つなくなっています!今日は朝からバタバタしていて気づきませんでしたが…。」

 ジェットさんが驚いたように声をあげた。ノア君はそれを聞いて満足そうに笑っている。

「それじゃあジェットさん、昨日の行動を教えてくれるかい。」

「はい。昨日は晩餐会の片付けをした後にモリ―さん、あ、メイド長とまかないを食べました。その後、私は今日の朝食の下ごしらえをしてから自室へ行きました。たぶん戻ったのは21時半過ぎだった気がします。その後はすぐにシャワーを浴びて、22時頃には寝ました。朝が早いので…。5時には起きて、身支度を整えて朝の掃除をしていました。モリーさんも起きてきて、掃除の後に朝食の準備をしていても最近朝早いダリル様が起きてこなくて、私…。」

 そこまで一気に話してジェットさんは黙ってしまった。無理もない。第一に発見したのはジェットさんだと聞いている。

「ありがとう。ジェットさん。思い出させてすまない。」

 ノア君は気遣うようにジェットさんに声をかける。

 そしてとびきりの笑顔で続けた。

「でもおかげで犯人がだいたい分かったよ。」

 え!!みんなも驚きノア君をみる。

「ノア君、すごいね。まだ話を聞いていない人もいるけどもう良いのかい?」

「う~ん、エマ夫人には話を聞きたかったけど、体調が悪そうだったしね。無理にでも聞きたいわけじゃないから。だから、まずは皆を集めてもらえるかな?」

 そう言ってノア君は屋敷にいる全員を食堂に集めるようにジェットさんに指示をし、僕たちは食堂で待つことになった。事態の展開にあまりついていけてない僕たちだけど、ノア君の余裕そうな表情を見ていると少し安心する。


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