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名探偵の助手  作者: 青葉
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 この本が読まれているということは、君の隣に僕はもういないんだろう。

 ということはきっと君が望んだ結末にたどり着いたということでもあるのかな。

 僕はちょっと、いや、かなり寂しいけど。

 だからこの本を書こうと思う。



『今回もお手柄!!またもや名探偵のおかげで迷宮入りを阻止!』

 今朝の新聞の一面の見出しは最近話題の名探偵のものだ。大学に行きがてら買ってきた。ここ、アウイナイトでの難事件を次々と解決する探偵が現れたのは3カ月ごろ前から。しかし、その名探偵の正体は謎につつまれており、魔人だ、貴族の隠し子だ、著名なミステリー作家だ、王族の関係者だ…など噂は大いに盛り上がっているが、明らかにはなっていない。みんな何かしらの理由があって顔を表に出すことが出来ない者だと考えている。

 しかし、『魔人』はないだろう。魔人とは、その人物が何らかの原因により以前の人格とひどく解離してしまっている状態のことを指す。一度そうなってしまえばもとに戻ることは難しく、常に精神的に不安定な状態となり、いつ暴走が起こるか分からない。以前とのあまりの変わりように、その周囲の人々は恐れ、悪魔と契約したから魔人になると言われ、迫害されていた時代もあったそうだ。『魔人』というのも、悪魔の魔から取ってきたと言われる。また、暴走は自他加害の恐れがあるため、魔人となれば入院という措置をとられることがほとんどである。昔は自宅監禁ということもされていたようだが、今はそうしたことは禁止されているはずだが、実際のところは分からない。また、魔人から完全にもとに戻ることは難しいとされているが、回復している者も存在すると言われている。そうしたことから、親族がこっそりと自宅療養という形で匿っていることもあるらしい。


 名探偵の正体か…正直、とても気になる。僕の専攻している心理学という学問の分野からも推理するというのは、遠からずという感じだと思っている。犯人像を見立てるという行為には、その犯人の犯行に至る心理、つまりHowではなくWhyの部分を考えることも必要なのではないだろうか。法治国家において犯罪を起こすに至るには、そのデメリットを超えてなお、行うべきだと考えている理由があるのではないか。その背景を知るのもまた面白いと思う。それに…やばい、もうこんな時間か。いろいろ考えていたら教授と研究指導の約束をした時間になっていた。一度研究室に行かねば。



 そこから午前中は教授に研究指導をしてもらって過ごした。そのおかげか、かなり形になってきた。ここらで少し休憩しても良いだろうと思ってメールの確認を行い、休憩しようとしたところ、姉からメールが来ていることに気が付いた。めちゃくちゃ嫌な予感がする。

『やっほ~元気?お姉ちゃんは元気だよ!でもとっても忙しいの。そ・こ・で、かわいい弟のアンバーくんにお願いがあります。お姉ちゃんの代わりに、最近連絡が取れなくなっちゃった友達の様子を見に行ってほしいの。お願い!!旅費は払うし、お小遣いもあげるから!すごく心配なんだけど、今どうしても休みが取れなくて…

 友達は1か月前に新しい職場に転職したんだけど、それから連絡が取れないんだ。新しい職場は貴族のお屋敷のメイドなの。調べてみたらそんなに大きくない家だから、使用人がいっぱいいることもないし、すぐに見つけられると思うんだよね。今、どうやって入るんだよって思ったでしょ~。なんと!我が出版社からその貴族へ取材依頼をしたらOK貰えたんだよね。最近、珍しい宝石がその貴族の領地から取れて少し話題になっているから、その取材という名目でね。だからかな、友達は小さいお屋敷だけど、すごくお給料が良いからってるんるんだったわ…。さらに、村の伝統のお祭り?も開催されるみたいだからその取材もお願いしたいな。もちろん、取材もしてほしい。ただ、大きいものに掲載するわけじゃないから安心してね☆いつもみたいによろしく☆住所は添付しておくね。


 p.s.なんと、取材中はお屋敷に泊めてくれるみたい!貴族様のお屋敷、満喫してきて~


 気をつけて行ってきてね。

 お姉ちゃんより』


 予感的中。また面倒なことを…でも、姉のお願いを断るという選択肢は残念ながら僕にはない。怒らせると怖いというのはもちろんだが、数年前に母が他界してから、姉には経済的にも頼りっぱなしなのだ。その姉の頼みなら断るわけにはいかない。論文の進みも良いし、行くか。あ、お金もう振り込まれてるや…。返信しなくても行く前提だよね、これ。別に良いけど。


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