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第3章 2 ミハイル
ミハイルは、誰よりも熱心に勉強に励んだ。義父が言ったからだ。お前の故郷は隣国のウクライナだ。勉強を頑張れば、いつか必ず帰ることができる。
そのいつかのために、賢くなるのだ。多言語を習得し、情勢と歴史を学び、小さな学者になりなさい。
ミハイルはその言葉を信じた。いつしか寮の中でも、彼の成績は一番になっていた。その発表をするときだけ、義父はミハイルに微笑みを向けた。
彼の義子はミハイルの他にも大勢いるようだった。肌の褐色な子、目の黒い子、色素の薄い子。いろんな子が寮にはいた。しかし、友だちではなく彼らはライバルだった。皆、結果を出せば故郷に帰れると伝えられていた。
ミハイルの熱意はその中でも群を抜いていた__彼は、子どもらしくそう自負している。故郷だと教えられたウクライナの詳しい情報は、授業で沢山習うことができた。批判的な文脈な講義が多かったが、そう問題のある国でもないんじゃないかとミハイルは思う。なんたって、自分が生まれた国なのだし。
2032年、13歳になったミハイルは、ようやくウクライナ行きを命令された。彼はもう、飛び上がって喜んだ。いくつかの検査入院を経て、ビザの発行手続きが始まった時には、込み上げる感慨を堪えるために服の袖を噛んでぼろぼろにしてしまった。




