第16章 4
そして、時計が9時をさした頃、オレグの家の呼び鈴が鳴った。
ジナイーダとアカトフが来たのだ。わざとらしく歓迎する子どもたちを、アカトフはうっとうしそうにあしらう。小汚い格好をした、非力なガキども。ジナイーダはいつものようにアカトフの側では黙りこくって、機械人形のように振る舞っている。雪のついたブーツを玄関に脱ぎ散らかし、アカトフは中に入っていった。背後の子どもたちが囁き合い、さっと散った。
広い客間で待ち構えていたのは、赤毛の少年だった。アカトフに見覚えはない。ジナイーダも、彼を見て表情を動かすことはない。
少年は、黒いスーツを着ていた。古めかしいデザインだが、彼の背丈にぴったりだった。アカトフ相手に少年はうやうやしくお辞儀をして、手を差し伸べた。
「初めまして。私はオレグ。パーティーの主宰です」
彼の堂々とした態度に気圧されて、アカトフは思わず差し出された右手と握手をした。オレグと名乗った少年は微笑んだ。
「まずはお座り下さい」
客間の中心に二つ、ビロード張りの椅子が用意されている。アカトフはどっかりと腰掛け、ジナイーダを呼び寄せた。ジナイーダが座ると、オレグは二人に悠々と近づいてきた。
「ウォッカはないのか?」
アカトフが要求すると、オレグは首を振った。
「我々は未成年なものですから。その代わり、飲み物がご用意してあります」
アジア系の顔立ちの少年が、銀製の盆を持って客間に入ってきた。載っているのは、湯気の立つ紅茶だった。アカトフは失望して鼻を鳴らす。紅茶なんて飲んでも何も面白くない。
オレグは薄ら笑みを浮かべたまま、アカトフ親子を見守っている。アカトフはこの生意気な少年に何となく嫌悪感を抱いた。子どもらしくない。優雅な振る舞いといい、物怖じしない落ち着いた表情といい。
「コーリャはどこだ?」
アカトフはわざと不機嫌に唸った。
「コーリャが俺たちを呼んだと聞いたから、わざわざ来てやったんだ」
オレグは答えた。
「彼もそのうち来ます。それまでの時間潰しに、我々が用意した余興はいかがでしょう?」
アカトフはあざ笑った。
「そりゃいいや。裸踊りか? どじょうすくいか」
「それより、ずっと面白いものです」
そう言って、オレグは客間を出て行った。




