第16章 3 ベグ、フョードル
ベグとフョードルは買い出しだ。スーパーで食材を買い込んだ。ベグは小さな子どものようにしゃべりまくった。フョードルは微笑ましく思いながら、彼の話に相づちを打った。血のつながらない弟や妹よりも、愛しく思える気がした。
ジナイーダたちを招く前に「ソビエト」の皆で夕食を摂った。コーリャが作ったボルシチやチキンカツレツ、アレクスが家で作ってきたババロアを分け合って食べた。何人かは食欲がない。気まずそうに、料理が残った皿を見つめながら口を手で押さえた。
「緊張する?」
健啖家のマリヤが、珍しく大人しいベグに話しかけた。
「……ちょっと」
オレグが身を乗り出してからかった。
「本当は、怖くてたまらないんだろ」
ベグがかっとして立ち上がろうとした。だがその前に、オレグは付け加えた。
「__俺もだ」
その横では、コーリャとシロンが囁き交わしている。
「ジナイーダたち、ちゃんと来るかな?」
「来るよ、きっと。君のことが気になって仕方ないはずだもの」
「それはそうだね」
アリーが、びっしりと文字が書き込まれた紙を何度も見返している。アレクスも一緒だ。
ドミトリーは、オレグの隙をついて二階にいる老人に会いに行った。ボルシチを持っていくと、老人は自分で匙を取って食べ始めた。
美味いとも、不味いとも言わない。ただ、休むことなく匙を口に運んでいる。それを眺めながらドミトリーは深呼吸を繰り返す。
「恐れているのか」
不意に、オレグの祖父が口をきいた。ドミトリーは素直に答えた。
「はい」
「何が怖い?」
「全てです。これから家に来る人たちも、自分たちの未来も」
老人は何も答えなかった。匙を空になった皿に置いて、口元を拭いた。
ドミトリーは皿を持って部屋を出ようとした。
「未来のために突き進め、オレグ」
自分に向かって投げかけられた言葉を、ドミトリーは背中で聞いた。




