第15章 2
「ジナイーダ・アカトヴァは勿論知っているね? 彼女が放火を疑われている」
「何だって?」
マリヤが立ち上がった。
「どうして……」
「彼女が君の家に出入りするところを何人も見ている。君と付き合い始めたが最近は不仲だったと学校では噂だった。……それに、彼女には別の黒い評判がある」
「どんな?」
仲間たち全員がフョードルの側に集まった。
「__ジナイーダの家には、死体が埋まっているという噂だ」
アリーが怖がってマリヤに抱きついた。
「勿論、まだただの噂に過ぎない。近所の住人同士で囁き交わしているだけの、ただの根も葉もない陰口かもしれない。彼女の両親は否定しているし、これ以上あらぬ噂を流されるなら法的措置も辞さないと憤慨している」
だが、どうしてこんな噂が流れたのだろうか?
誰もがコーリャの顔をちらりと見ずにはいられなかった。コーリャがもしあのまま彼女と仲良くしていたら、しまいにはどうなっていた?
「ウクライナに帰る前に、しなきゃいけないことがあるみたいだね」
マリヤの言葉に、反対する者はいなかった。
フョードルとシロンがジナイーダの家の付近を回って聞き込みをした。ジナイーダの噂は特に子どものいる家庭に多く広まっているようだった。大人の女からのジナイーダの評判は芳しくない。いつも冷淡で、挨拶もしない。きつい目で自分や我が子を睨んでくる。
アカトフ夫妻の本当の子どもでないという話も聞いた。まだ彼女が幼い頃にパーティーに招いたことのあるという奥さんが、ひどく顔をしかめて彼女の不作法さを嘆いた。まともな人間の子じゃないから、自分の家には決して近づけたくない。パーティーは台無しだったと言っていたが、実際に彼女がどんな悪さをしたのかは教えてくれなかった。
オレグは久しぶりに登校するふりをして、ジナイーダを一日尾行した。彼女に親しい友達はいない。誰も、放火疑惑のある彼女に話しかけようともしない。しかし彼女は何食わぬ顔で学校に通い続けている。
彼女を幼い頃から知っている女子と話した。可愛らしいジナイーダにはすぐに話しかけに行ったが、彼女の父親が何故か自分たちを追い払った。その時に彼女の行儀の悪さや出生に関する恥知らずな秘密を吹き込まれ、友達になる気はすっかりなくしてしまった。
「それでも、あの子と仲良くしてた子はいるの」
思い出を辿りながらその子が教えてくれた。
「それは誰だ?」
「ごめんね、もう名前も覚えてない。まだ小学校の時にいなくなっちゃったの」
「引っ越しか?」
「ううん。消えたの」
同様の話を、ジナイーダの父親の職場を探っていたベグが仕入れていた。
彼の同僚の中で、子どもを亡くした者がいる。川に落ちて死んだその子に直前までまとわりついていたのがジナイーダだったため、ジナイーダの父親に不信感を抱いている。
また、ジナイーダの家の近所でも、息子や娘が突然失踪した傷を抱えている家庭は多かった。同じ地区だけで、五人だ。ほんの十年かそこらの間に。




