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第15章 1

 新たに仲間となったドミトリーを、ほとんどの子どもたちが歓迎した。ドミトリーの人柄の良さは周知の通りだったから。

「どうやって火をつけたんだ?」

 朝、ベグがにたにた笑いながら尋ねた。ドミトリーは腕の火傷に巻いた包帯を撫でながら、顔を曇らせて答える。

「ガスを家の中に充満させて、ライターに火をつけた」

「よく無事だったわね」

 と、アリー。

「まあね……」

 一夜明けて自分のしでかしたことの重大さにドミトリーは気がついた。きっと家族はすぐに駆けつけて来る。ダミーの人骨を残しておいたけれど、はたして警察が騙されるかどうか。もし……。

 だが、もう後戻りすることはできない。

 オレグがまだ不機嫌そうな顔で、仲間たちと会話するドミトリーを見守っている。彼は、ドミトリーの前で号泣したことを少し恥じていた。

「これで、あの女ともおさらばってわけだ」

 ベグがやや不満げに呟いた。はっとコーリャが彼を見る。

「ジナイーダのこと?」

 そういえば、ドミトリーは彼女とつながっていたのだ。

「ジナイーダもお前が死んだと思い込んでいるのか?」

 オレグが尋ねる。ドミトリーは曖昧にうなずいた。

「と、思う」

 マリヤが考え込む。

「あたしらがあんたの家に放火したんだと思ってないかね? また通報でもされたら大事だよ」

「あの子は、そこまでしないと思うよ。僕のことは、最初からあまり興味がなかった」

 そう告白するドミトリーの顔は暗い。

「コーリャ、言っちゃなんだけど、彼女はずっと君のことしか考えていなかった。どうやって君をつなぎ止めるか、自分の父親と引き合わせるか……。ジナイーダが僕と付き合ったのは、彼女のお父さんが僕を気に入ってたからさ」

 ドミトリーはちょっと笑う。

「ほら、僕は金持ちだったから」

 笑い飛ばしたのはベグだけだった。

 オレグが呟く。

「どうして、そこまでコーリャが好きなのかね」

 マリヤ、シロン、アリーが口々に反論する。

「あいつは、コーリャが好きなんじゃない。傷つけて楽しんでいるだけだ」

「本当に好きなら、秘密をあんな形で暴露しないよ」

「ひどい別れ方をしたのに、まだ会いたがっているなんて普通じゃないわ」

 コーリャは自分の話なのになかなか口を挟めずにいた。

「コーリャに執着しているのは事実だな……」

「コーリャが彼女の兄弟だからかしら? ……もし彼女の言ってることが本当なら」

「どうかな」

 ドミトリーが異を唱える。彼女と一番長く過ごしてきたのは彼だ。

「ジナイーダは……ただ兄弟に会いたいだけじゃない気がする。むしろずっと、父親にコーリャを会わせることの方が大事みたいだ」

「よっぽどお父さん思いなのね」

 マリヤは、黙っているコーリャの頭を撫でた。

「あんたにとって良い父親じゃなかった。会う必要は全くないよ」

「……うん」

 夕方になって、フョードルがやってきた。彼はいくつか新しい情報を持ち帰っていた。

「焼け跡から君の物と思われる骨が見つかった。君の御家族が、葬儀のために骨を引き取ったよ。ご両親とも、ひどく憔悴していた」

 ドミトリーはさっとうなずいた。

「そうですか」

「君が生きていると知ったら喜ぶだろうけど……」

 フョードルは肩をすくめる。

「まあ、君の決断を妨げはしない。今はね」

「ありがとうございます」

 もう一つ知らせがあると、フョードルは言った。


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