第14章 5
玄関に立っていたのは、ドミトリーだった。
乱れた金髪、ところどころ焼け焦げの穴があるパジャマ姿で、挑むような目つきでオレグをまっすぐ見つめている。たじろいでオレグは後ずさった。マリヤとコーリャも驚愕して大声を出した。
「ドミトリー……!」
「無事だったんだね!」
「そりゃあそうさ」
オレグの乾ききった唇が動いた。青い顔、てかてかと光る指先。フョードルが顔をしかめ、そっとマリヤやコーリャを後ろに下がらせた。
「僕が、火を、つけた」
ドミトリーは、オレグだけに向けて言った。
オレグはまだ口もきけない。
「これで僕は、死んだことになったはずだ」
ドミトリーは震えているオレグの手を油で濡れた手で掴み、突然叫んだ。
「これで良いだろう? もう、僕はドミトリーじゃなくなった! ロシア人のドミトリーは死んだんだ! 金も、成績も、友達も何もかも自分で捨てた!」
君たち以外、もう僕には誰もいない。ジナイーダもだ。
「だから__僕を、仲間にしてくれる?」
オレグは、青白いドミトリーの頬を両手で包む。熱で縮み上がった金髪が手に触れた。
間近で見るドミトリーの顔は、以前と比べてやつれている。一日で仕上がった顔じゃない。きっと、オレグがドミトリーを排斥してからだ。
俺が、ドミトリーをここまで追い詰めた。
「馬鹿な奴」
やっと絞り出した言葉は、涙でよれよれにねじれていて、とても聞き取れるものじゃない。だけどドミトリーは自分も嗚咽しながらうなずいた。
「お前は……あのまま幸せに……なればよかったのに。良い大学に行って、親父の会社を継いで、金持ちになって……それで良かったのに……」
オレグは絶叫した。
「お前は、巻き込みたくなかったのに!」
「……何でだよ。僕はずっと、オレグと馬鹿やってる方が……その方が、勉強よりも、家族と過ごすよりもずっと楽しかった」
仲間に入れて。必ず役に立ってみせるから。火傷した腕や足を庇いながらドミトリーは何度も訴えた。話し声に気づいて下りてきた仲間たちは、ドミトリーの姿を見て目を丸くする。けれど、何があったのかと聞ける雰囲気ではとてもなかった。




