表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/98

第14章 5

 玄関に立っていたのは、ドミトリーだった。


 乱れた金髪、ところどころ焼け焦げの穴があるパジャマ姿で、挑むような目つきでオレグをまっすぐ見つめている。たじろいでオレグは後ずさった。マリヤとコーリャも驚愕して大声を出した。

「ドミトリー……!」

「無事だったんだね!」

「そりゃあそうさ」

 オレグの乾ききった唇が動いた。青い顔、てかてかと光る指先。フョードルが顔をしかめ、そっとマリヤやコーリャを後ろに下がらせた。

「僕が、火を、つけた」

 ドミトリーは、オレグだけに向けて言った。

 オレグはまだ口もきけない。

「これで僕は、死んだことになったはずだ」

 ドミトリーは震えているオレグの手を油で濡れた手で掴み、突然叫んだ。

「これで良いだろう? もう、僕はドミトリーじゃなくなった! ロシア人のドミトリーは死んだんだ! 金も、成績も、友達も何もかも自分で捨てた!」

 君たち以外、もう僕には誰もいない。ジナイーダもだ。

「だから__僕を、仲間にしてくれる?」

 オレグは、青白いドミトリーの頬を両手で包む。熱で縮み上がった金髪が手に触れた。

 間近で見るドミトリーの顔は、以前と比べてやつれている。一日で仕上がった顔じゃない。きっと、オレグがドミトリーを排斥してからだ。


 俺が、ドミトリーをここまで追い詰めた。


「馬鹿な奴」

 やっと絞り出した言葉は、涙でよれよれにねじれていて、とても聞き取れるものじゃない。だけどドミトリーは自分も嗚咽しながらうなずいた。

「お前は……あのまま幸せに……なればよかったのに。良い大学に行って、親父の会社を継いで、金持ちになって……それで良かったのに……」

 オレグは絶叫した。

「お前は、巻き込みたくなかったのに!」

「……何でだよ。僕はずっと、オレグと馬鹿やってる方が……その方が、勉強よりも、家族と過ごすよりもずっと楽しかった」

 仲間に入れて。必ず役に立ってみせるから。火傷した腕や足を庇いながらドミトリーは何度も訴えた。話し声に気づいて下りてきた仲間たちは、ドミトリーの姿を見て目を丸くする。けれど、何があったのかと聞ける雰囲気ではとてもなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ