第14章 2
オレグが活き活きとしている。もう学校にはずっと行かず、「ソビエト」に夢中だ。
「レーニンになりたいんだろ」
マリヤはそう言ってオレグをからかった。
「別に」
オレグはそっけなく首を振りながらも、聞き返した。
「そんなに彼に似てるか? 俺は」
「さあね」
「俺たちのソビエトにレーニンは要らないよ。スターリンもな。皆対等だから」
地図を読みながら彼は言った。アリーが首を傾げた。
「そういえば、何でドミトリーを入れてあげないの?」
オレグの顔がこわばった。
「あいつ、あたしらのことを結構気にしてるみたいだね。シロンが何度か会ってるけど、あんたに会えなくて寂しがってたってさ」
オレグは、ドミトリーの顔を思い浮かべた。快活で、善良で、子どもっぽい。先に話しかけてきたのは彼からだったし、何故か自分を本気で好いているようだった。
「あいつはロシア人だ」
オレグは殊更に厳しい声で言った。
「俺たちとは違う。接触したり、ましてや仲間に入れるなんて有り得ない」
ベゲモートがオレグの後ろでうなずいている。
「でも、彼は僕らの秘密を守ってくれてる」
シロンが反論する。
「君がそう言うように、僕らの敵だとは思えないけど」
「敵でなくとも、味方でもない。ドミトリーは甘やかされたオリガルヒの御曹司だ。とても……俺たちの苦悩は分かりっこないよ」
君だって、不自由のない暮らしをしてきたくせに。シロンは心の中で呟いた。
ドミトリーにはもう会わない__それがオレグの命令だった。しかし、彼の家の周りにしょちゅうドミトリーは出没した。大抵出くわすのは、シロンかコーリャだった。彼らはオレグの言いつけを忠実に守り、ドミトリーと顔を合わせても会釈をするだけに留めた。




