第12章 4 皆でシロンの家へ
足音がした。だんだん近づいてくる。
四人ははっと身構えた。一人だ。ライトも持っていない。黙って、点々と灯りの灯る公園の中の道を歩いてくる。
「誰だ!」
オレグの鋭い呼びかけにも返事はない。待つよりはいっそとこちらから近づいて、外灯に照らし出された顔に四人は唖然とした。
「ジナイーダ!」
ここに来るはずのない少女が、黙って立ち止まる。裸足だ。止まっても少しふらついている。そして……服がひどく破られ、あざのある肌がところどころ見えている。腫れ上がった唇の端から滲んだ血が固まりかけている。
ひどい様子だ。絶句する四人を彼女は何の感情もこもらない目で見つめた。怪我をしているにも関わらず全く損なわれない美貌が、今は痛々しかった。
「ジナイーダ……」
ドミトリーが近寄りかけて、コーリャに目で合図した。コーリャが彼女の肩を掴むと、ジナイーダは力が抜けたように地面に崩れ落ちた。
「ここに来る途中で、やられたの?」
ジナイーダは首を振る。コーリャはハンカチを取り出し、口元の血を拭こうとした。
「触らないで」
ジナイーダが拒絶した。その声はひび割れている。
「誰がやった?」
険しい顔のオレグが聞いたが、ジナイーダは無視した。遠慮がちにドミトリーが彼女の前に屈みこむ。
「今夜は来れないから彼に伝えてって……僕に言ってたのに」
「気が……変わったの」
コーリャは力なくうずくまる彼女の背中をさすった。
「もう遅いよ。僕たちもだけど、帰らなきゃ。送っていこうか」
「嫌」
強い口調で彼女は言い返す。
「家には帰りたくない。ここにいるわ。あなたもいてくれるんでしょ?」
「ここは駄目だよ。知ってる? 事件が__」
「知ってる」
シロンが口を挟んだ。
「僕のアパートに来たら?」
ドミトリーがぎょっとしたが、構いやしない。
「そうだよ、皆いるしおいでよ。何ならドミトリーとオレグも」
ジナイーダは無言でうなずいた。
「歩ける?」
「ええ」
それっきり、彼女は一言も喋らずに、コーリャの肩にすがって歩き出した。
二人の先を行くドミトリーがシロンに囁いた。
「いいのかい?」
「どうせもう、皆の溜まり場になってるから」
「オレグもいい?」
「いいよ。狭くてよければ」
そう、問題なのは二人の険悪さではなく部屋の広さである。
アパートに戻ると、憤然としたベゲモートが喧嘩腰で出迎えた。
「遅いぞ!」




